雪の中の柴犬風景

わが家の住む街は、関東平野のはしっこに位置する東京の片田舎です。山間部までは距離があります。そんな位置関係なので、冬でも雪が降るのはほんの数日です。雪が舞ってもすぐに消えていき、積もるのは数年に一度くらい。そのせいか、雪が積もった日の散歩では、鼓太郎も小夏もテンションがあがっていたようです。子供と同じで、妙に楽し気に雪の中を勇ましく進んで行きます。


個人的な感想ですが、雪の中に二柴の赤色は良く似合います。雪のエピソードを思い出し、書き綴ってみました。犬と暮らす方どなたにも、それぞれのエピソードがありますが、あくまでもわが家の私的なエピソードと想い出と言う独善的な記事です。

記事内インデックス
東京の雪の記録
初めて雪を体験した日
新雪の上の肉球スタンプ
道の駅なるさわで久しぶりの雪

2014年の大雪 部屋に閉じ込められた
老犬でもテンション高し

東京の雪の記録

鼓太郎、小夏と暮らし始めてから、東京の片田舎でも何回、大雪の日があったのか?と気象庁のデータを覗きにいきます。東京の中心部だと思うので、片田舎とは状況が違うかもしれませんが、大差はないはずです。

鼓太郎がやって来た2000年8月以降の東京の降雪日数と最深積雪量です。雪が舞わない年はないようですが、しっかりと積もる年はやはり少ないようです。

その中で2014年の大雪は、強く記憶に残っています。ドカ雪が二度あり、東京の片田舎も北国かと思うばかりの風景になりました。同時にこの年の大雪が、鼓太郎が雪の中を駆けた最後でもあったので、余計に記憶に残ってます。

初めて雪を体験した日

鼓太郎が初めて雪を経験したのは、わが家にやってきてから半年後。東京の片田舎にも雪が降ります。2001年2月の雪です。生後8ヶ月くらいで、どこか幼児体型の名残りはあるものの、もう成犬かなという頃です。

前夜から降り始めた雪が、朝起きると地面を覆いつくしています。平日で仕事だった私は、朝散歩を家内に頼み出勤です。

朝散歩に出た鼓太郎は、初めて見る白の世界を暫く不思議そうに見ています。そして、その白いものの正体を確かめるがごとく、前足を雪の中に。

ちょっと驚いて手を引っ込めましたが、意を決して、ずぼっと踏み込みます。冷たさは感じたみたいですが、一歩入れば、むしろ楽しい非日常の体験。人の入っていない雪の上をどんどん駆ける様に進みます。雪の正体を探るべき、盛んにたべたり。

ともあれ、初めて見て、初めて触れた雪を気に入っていたようです。何よりもこの表情が物語っています。

真っ白な雪の中に佇む赤柴とのコントラストは、私も家内も気に入りました。雪の中の柴犬は、なかなか映えるものです。柴犬のみっちりとしたダブルコート、冬毛は、こうした環境に適合するためのものなんだと、その時思いました。

新雪の上の肉球スタンプ

初めての雪中散歩になったの日、家内が何枚か写真を撮ってくれていました。後日、現像から戻ってきた写真(当時はデジタルではなく印画紙の写真)に、戸惑い、はしゃぐ鼓太郎の表情があります。

でも、その中で一番気に入ったのが、これ。

雪の上に肉球スタンプがこんなにきれいに残るんだと初めて知りました。誰も踏みしていない、さらの雪の上に続く肉球スタンプ。なんてことありませんが、なんとなくずっとお気に入りの写真です。

道の駅なるさわで久しぶりの雪

初めての雪を体験した翌年は、東京の片田舎に雪は降らず、翌々年も雪は舞うものの積もることはありませんでした。まだ若かった鼓太郎は、舞い落ちる雪を空中キャッチすべくジャンプする姿を見せてはくれましたが、本人的には積もっていないので別物と思っていたのかもしれません。

晴れた3月の休日に、路面の雪も消えたろうし、まだ雪化粧の残る富士山でも見に行こうかと車でロングドライブ。その途中で立ち寄ったのが道の駅なるさわです。

通路や駐車スペースはきれいに除雪されていましたが、その除雪された雪が通路の横に山盛り状態です。鼓太郎にとっては、二度目の雪景色。二年ぶりの雪景色です。テンションあがってるように見えます。

鼓太郎は、人が踏み込まないような場所へどんどん進み、除雪された雪が積み上げられた山の上を駆けあがっていきます。ロングリードじゃなかったので、手が届く範囲でストップさせます。だいぶ不満そう。

雪山の上に立ち、少し勝ち誇ったような不満気な顔をしながら、少し得意気にも見えます。

やっぱり雪が好きなようです。単に久しぶりの雪という事もあるのかもしれませんが、飽きることなく、あっちへ突進、こっちへ突進を繰り返していました。

こちらは、だんだん寒くなってきたので、申し訳ないと思いつつ、小一時間で切り上げました。また来年も雪が降れば遊べるよと言い聞かせます。

しかし、その後の長年の間、東京の片田舎で雪が積もることは、殆どありませんでした。わずかに積もってもすぐに消えていきました。鼓太郎も雪の記憶を失くしていたかもしれません。

2014年の大雪 部屋に閉じ込められた

道の駅なるさわで雪遊びしてから、その後、長いこと大雪はありませんでした。雪が舞うことはあっても、積もることはほとんどなく、少し積もってもすぐに溶けてしまう年が大部分でした。

2004年9月にわが家にやって来た小夏は、そのせいかずっと雪の体験をせずに暮らしてきました。

でも、大雪は突然に。

2014年鼓太郎13才半、小夏10才半の頃、東京の片田舎も大雪に見舞われます。前日から降り始めた雪は、翌日になってもやまず、日中には猛吹雪になっていました。

こんな日は家の中に籠りゆっくりしていたいというのは人間の希望で、二柴はいつものように散歩を要求します。朝散歩の時も雪が結構な量で積もっていて、二匹で並んで楽しそうにしていたので、夜散歩を待ちわびていたのかもしれません。

朝散歩の時。小夏にとっては、初めての本格的な雪。戸惑いつつ、鼓太郎を追いかけながら楽しそうに歩きます。

私と言えば、朝散歩の後、次第に吹雪が強くなっていたので、できれば外に出たくない。でも、鼓太郎と小夏が目で散歩要求です。行かないという選択はないようなので、渋々と夜散歩の準備にかかります。

そして玄関ドアを開けます。正確には、開けようとしました。

しかし、・・・ドアはビクともしません。???何事か???閉じ込められている?

今度は、かなり思い切りドアに体当たりしてみます。ズズっと鈍い音を立てて、ドアが少し開きます。どうやら、玄関ドアの前に大量の雪が積もって、ドアの開閉が出来なくなっていたようです。何度か、ドアを開け閉めして雪を押しやり、ドアの開閉範囲を広げます。どうにか身体がすり抜けられるようになって、外へ出て仰天です。

わかりにくいですが、右側の黒っぽいのが玄関ドア。この程度の雪でも、ドアは容易には開かなくなります。

30cmくらいの高さまで雪が積もってます。わが家は、角部屋のせいでマンション廊下の突き当り。風向きなんでしょうが、見事に吹き溜まりになってしまったようです。北海道など雪国のマンションは、廊下は屋内ですが、東京方面は基本的に屋外です。なるほど、雪国のマンションは雪のことを考慮した仕様になっているんだと悟ります。

こんな中、本当に散歩に行きたいのか?散歩すること可能なのか?そもそも鼓太郎も小夏も、この吹雪の中で散歩したいんだろうか?

今日の夜散歩はなしだな、と思い家の中に入ろうとドアを開けると、鼓太郎が鼻を突き出してきて外に出ようとします。何か嬉し気な表情に見えるのは気のせいか?散歩に行きたいみたいです・・・。

しかし、この積雪ではカートは操縦不能、と言うよりも進むことはできそうにない。仕方がないので、散歩に行く気満々の鼓太郎を抱っこして散歩へ。マンションの外に出ると、人も車も殆ど通っていません。やっぱり、家の中で大人しくするのが賢明だ、と鼓太郎を見ますが、目をきらきらさせながら行く気満々です。

諦め、意を決して吹雪の中に踏み出します。遭難したらシャレにもならない・・・。

片や鼓太郎と言えば、自分のお腹の高さ以上に積もった雪をものともせずに進んで行きます。

駆けている?いつもよりスピードが速い。こちらは、雪に足をとられ、滑りながらなんとか後からついていきます。それでも、鼓太郎のスピードには敵わず、リードがピンと伸びきり、そのたびに鼓太郎が不満気な表情で振り返り催促します。身体も冷え切り、早々に切り上げようとする私。まだまだ、と前を向く鼓太郎。

結局、猛吹雪の中で小一時間の散歩となってしまいました。どうにかマンションに戻り、やれやれと玄関ドアを開けると、・・・、そこには仁王立ち状態の小夏が・・・。置いていかれたのが不満だったみたいです。

腹の中では、小夏の散歩はパスかな?鼓太郎ほどの散歩好きでもなければ、雪がそれほど好きな訳でもないからな、と思っていました。でも、不満気に仁王立ちしている小夏の姿を見ると、はいはい、少しだけ休憩したら小夏も散歩に行こうねと言わざるを得ませんでした。

外に出ると小夏も元気。鼓太郎のように新雪を分け入ることはあまりしませんが、結構なスピードで歩きます。

前に通った人が踏みしめたところを選んで歩きます。前に通った人の跡って、少し前に私と鼓太郎が踏みしめた跡なんですが・・・。この猛吹雪の中、外を歩くもの好きはいません。

老犬でもテンション高し

2014年のこの大雪の翌日、空は驚くように晴れ渡りました。気温は上がってないので、雪は白いまま。青い空が広がり、積もった雪に光が反射して、東京ではなかなか見れない風景になっていました。

雪がやんだので、一緒に手づくりカートに乗り込んで、散歩へGo!

朝散歩で鼓太郎も小夏も、そんな風景の中、二匹で並んで嬉しそうに歩きます。私的には決して歩きやすい訳ではないのに、二匹のお気に入りの公園まで引っ張って行かれます。でも、公園の中はほぼ新雪状態。近所の子供が雪ダルマを作る前だったようです。

雪は深い。鼓太郎の胴体の半分くらいまではあります。これじゃあ、公園の中には入れないとUターンしようとしましたが、それに反して鼓太郎が、新雪にジャンプ。どんどん、公園の中に入っていきます。何でも鼓太郎の真似をする小夏も慌てて鼓太郎の後を追います。渋々、それに付いていく私・・・。

公園の中に入った鼓太郎を見ると、流石に普通に歩くことはできず、両手両足を揃えてウサギのようにピョンピョンと跳ねるように進みます。小夏も同じように跳ねようとしますが、脚力が弱いのか体が重いのか、あまり前へ進めず、もういいですという感じで固まってます。

これは体力使うだろう。すでに13才半の老犬になっていた鼓太郎なのに、こんなに元気があるのは少々驚きです。これだけ、興奮するのも久しくありませんでした。それだけ雪が好きだったことが、この表情からわかります。

北海道生まれの私は、いつか冬の北海道に鼓太郎と小夏と言ってみたいと思ってました。残念ながら実現しませんでしたが、青い空と白い雪、そこに赤柴の鼓太郎と小夏が駆けている風景を見たかったと思ってます。実際に見ることのなかった風景ですが、頭の中には鮮明にその風景が刻み込まれています。鼓太郎も同じかな。小夏は、すぐに飽きて、抱っこしてくれとばかりに私の顔を見上げるのかなとかも思います。

冬になると、雪が降ると、白い世界に佇む柴犬の風景を気付かないうちにイメージしています。

 

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