子宮蓄膿症は、犬に多く見られる病気です。言うまでもありませんが、子宮に関わる病気なので、メス犬だけの疾患です。未去勢で高齢かつ出産経験のないメス犬に発症する確率がかなり高いそうです。50%以上の確率とも言われています。他の動物では、あまり見られず、他の動物では牛に見られるそうです。
わが家の小夏は未去勢で出産経験なし、そして2018年8月に14才となりました。子宮蓄膿症を発症しやすい条件に全部当てはまっています。子宮蓄膿症については、もちろん知識として理解していましたが、元気印の小夏とは無縁の病気と思っていました。いえ、無縁だと信じていました。
しかし、14才の誕生日を迎える少し前から、なんか元気がない、大食いだった小夏がご飯を食べ残す、陰部の周りが汚れているという状態が顕著になってきました。それまでも生理の後に同じような状態になることはありましたが、比較的短時間で元に戻っていたので、今回もいつものことと、様子見を続けていました。しかし、今回はちょっと違う。数か月たっても回復の兆しが見られませんでした。生理ではないようですが、薄い血を含んだような分泌物が、いつまでも出ています。
流石に、「これは、おかしい」と病院へ。
血液検査、エコー検査をしてもらい、診断結果は予感はありましたが、やはり子宮蓄膿症でした。
病状
子宮蓄膿症は、子宮内膜が腫れ細菌感染を起こし、子宮内に膿がたまる疾患です。
食欲不振、多飲多尿、嘔吐、腹部膨満、白血球増などが症状として見られます。子宮蓄膿症には、子宮内にたまる膿が外部に出る開放性と外部にでない閉鎖性の2種類があります。
感染した細菌によっては、子宮の中で毒素を出し血栓を作ったり、腎不全を起こしたり、全身のあちこちに不全な状態を引き起こすこともあります。このような重篤な状態になると、死に至る危険性があります。
原因
犬に限らず、動物は発情期を迎えると妊娠に備え各種のホルモンを分泌します。これらのホルモンの一つに黄体ホルモンがあります。黄体ホルモンは、排卵後に分泌されるホルモンで、受精卵が着床しやすいように子宮粘膜を肥厚化させる機能があります。
人間は、妊娠しなければ黄体ホルモンの分泌は終了しますが、犬は、妊娠しなくても、約2ヵ月間、黄体ホルモンが分泌され、子宮内膜は肥厚したままになります。この肥厚した子宮内膜は細菌感染も起こりやすく、その結果、子宮蓄膿症を発症しやすくなるというわけです。
このように、犬が子宮蓄膿症にかかりやすいことは、犬の体の構造、仕組みから不可避の止むを得ないことと言えます。
ただ直接的な原因は、細菌感染ですので、感染しない限りこの疾病を引き起こしません。実際に子宮蓄膿症に罹ることなく生涯を全うするメス犬もたくさんいます。
とは言え、細菌感染は完全な回避は困難です。外陰部と肛門や尿道が物理的に近いため、よはり完全予防は難しいです。完全な予防をということであれば、若い時期の避妊去勢しかありません。避妊去勢をしていない場合は、こうした疾病の存在を理解して、何かおかしいと感じたら、その可能性を疑って病院へ行くのが一番だと思います。
処置・治療方法
薬(抗生物質、輸液(点滴))での内科的な治療方法もありますが、基本は外科手術になります。なお、閉鎖性の場合には、外部に膿を排出できませんので、内科的な治療はできません。
そして何よりも、子宮蓄膿症は処置までのスピードが重要です。子宮内に溜まった膿が全身に回ったりすると、致命的な症状になります。このため、動物病院で相談するとほぼどこの病院でも即入院、即手術を勧めると思います。
手術は、子宮と卵巣の摘出になります。避妊去勢手術と術式はほぼ同じです。感染による膿の溜まり方や全身への影響への配慮が、避妊去勢手術とは異なります。高齢になってから発症が多いため、手術・全身麻酔に耐えられないと、処置困難ということで、致命的になることもあります。
わが家の小夏の場合
わが家の小夏は、2018年9月に子宮蓄膿症の手術をしました。この時、小夏満14才と1ケ月。
7月初旬から、年齢が年齢なのではっきりしたものではありませんが、生理が始まりました。年を重ねるごとに、生理期間が長くなっているような気がしていましたが、この時はさらに長い。8月も終わろうというのに、まだ出血(薄い血の色)が続いていました。
同時に、大食いだった小夏が、ご飯を食べ残す、体重がどうも減っている、あちこちの毛がはげちょろになっている。生理に加えて、この年は猛暑の夏だったので、これらの食欲減退などもやむを得ないのかと思っていました。
しかし、どうも外陰部周辺が汚れているのが気になります。朝晩、散歩の後に吹いているのですが、どうにも周辺部の毛が黒くバリバリに固まってます。これは、普通の汚れじゃない。一種の膿みたいなもので、ばりばりになっているのではと心配になり、病院で診断を受けることにしました。
診断はすぐに出ました。子宮蓄膿症です。
外科的手術になる、年齢的に大丈夫か、全身麻酔は怖い、と数日悩みましたが、これからの元気な生活のために手術をお願いすることにしました。
結果オーライでしたが、そもそも避妊去勢をしてこなかったのが、できるだけ体にメスを入れたくないとの思いだっただけに、その数日間は私なりに悩みの時間でした。小夏は、自分の病気のことはわかってないので、いつもと変わりなかったのは当然ですが。
その時の別ブログ(柴犬鼓太郎と小夏の陽だまり2)記事は、以下の通りです。あまり生々しいところは省いてますし、あまり参考にならないかもしれません。ご興味、お時間あればご覧ください。
2018/9/2 どうやら、あたし病気らしい・・・。
2018/9/3 明日、入院して・・・。
2018/9/4 それじゃあ、行ってきます!
2018/9/5 台風の日だったけど、手術は無事に終了
2018/9/6 本日退院
2018/9/7 ただいま!無事、帰還!
子宮蓄膿症は、早期発見ができれば致命的な疾病ではありません。それでも、物言えぬ犬だからこそ、一緒に暮らすパートナーの人間の役割は大切です。
早期の避妊去勢手術に踏み切れば、少なくとも子宮蓄膿症の心配はありませんが、個人的には今でもできれば死ぬまで自然にそのままにしてあげたいという思いは変わりません。男性のほうが女性に比べて、避妊去勢手術に抵抗感が強いと聞いてます・・・。