鼓太郎と暮らし始める前にテレビなどで、海辺を犬連れで散歩する光景や海で泳ぐ犬などを見ていました。当時は、どの犬も海が好きで、泳げるものだと思ってました。なんたって、犬かきという泳法があるわけですから、その頃の私は疑うことなくそう信じていました。
鼓太郎が二歳の誕生日まで、あと少しとなった時に、「そうだ、海へ一緒に行って海水浴をしよう」と三浦海岸へ足を伸ばしました。鼓太郎が初めて海を見たのはもっと前ですが、海の中に入るのはこの日が初めてです。わが家に来る前には、おそらく海すら見ていないはずです。
海岸沿いの道路に入ると、窓から礒の匂いが車内に流れ込みます。潮の香りに、鼓太郎は関心をもったようで、窓の隙間から鼻先を突き出し、匂いを嗅ぎまくってます。それまでに海に来たのは冬だったこともあり、磯の香りはあまりしませんでした。
駐車場に入ると、早く外に出ようと暴れ始めます。海が大好きという訳ではありません、どこかに車で出かけた時はいつもこのパターンです。
車のドアをあけると、指示したわけではありませんが、砂浜を駆けて海へまっしぐら。波打ち際を少し不思議そうに眺めていたのは束の間で、少し警戒しながらも水の中へ。
私は、泳ぎたいのか?と思い、私もクツを脱ぎ水の中へ。
初めのうちは、楽しそうでした。でも、それは数分のこと。
この日は天気も良く、波は高くなかったのですが、それでもたまに大きな波が混じります。あ、少し大きめの波が来たな、あれを飛び越えるとなかなか格好が良いのにとか考えてましたが、鼓太郎、なんだかわからずにその大き目の波を頭から被ってしまいました。
驚いたようです。そこから、海の中にいるのが嫌になったようです。もう少し行こうとリードを引っ張っても、足を踏ん張って動きません。と言うよりも、砂浜の方に逃げようとします。
海が嫌いにならないように、もう少しもう少しと、波打ち際を一緒に歩きます。それでも、ザアッと打ち寄せてくる波が嫌みたいで、私にしがみついてきます。表情はパーカーフェイスですが、尻尾はずいぶんと下がっています。
しがみついても、自分の足に波があたるので、さらに逃れようと、私の体をよじ登ろうとしています。鼓太郎は、何か怖いものから逃れる時は、私たちの体をよじ登る癖が子犬の時からありました。
私が助けてくれないと悟るや否や、自分で一目散に浜の方へ向かいます。
はじめどっちへ逃げれば良いのかわからず、沖の方へ向かってましたが、ちょっと進んで水が深くなることに気付き、方向転換していました。はじめて、海に入ったので、どちらへ向かうべきかわからなくても、無理もないのかもしれません。沖に向かって、溺れなくて良かった。
浜へと逃げている顔が、ポーカーフェイスの鼓太郎にしては、少し情けない表情です。ちょっと可愛いと思いますが、本犬にしてみれば必死だったのかと今になって申し訳なく思ってます。
犬でも水が得意な犬もいれば、苦手な犬もいるそうです。レトリバー系は、泳ぐの大好きですけど、柴犬は、どうも水や泳ぎが苦手な子の方が多いようです。野山で猟犬だった先祖の血なんでしょうか。
海水浴?で楽しませてあげようと連れて行きましたが、水には入れない方がよかったのかな?自分から入ったんですけど・・・。
それ以降、鼓太郎は海へ行っても、波が届かない範囲しか歩きませんでした。
柴犬は、海よりも山の方が似合う?