小夏の病歴 腎不全の診断

小夏2005年1月頃 なぜお赤飯?あたし食べれないけど。

小夏が我が家にやって来てから半年ほどした頃、散歩から帰ってきた家内が首を傾げながら、「小夏、やたらオシッコの回数が多いんだけど。もう出るものないのに、オシッコの体勢になって、一滴、二滴を際限なくする。頻尿とか?膀胱炎とかかな?」と心配気に言います。何日か様子見ても良いかとも思いましたが、コクシジウムの一件があったので、間を空けずに、次の日に病院に行ってもらうように頼みます。

これが、小夏の最大の病気(と言うか騒動だった)、腎不全の始まりです。

腎不全
基本的に人間の腎不全と同じです。何らかの原因で腎臓の機能が低下し、血液中の老廃物のろ過が上手くできず、さまざまな機能障害を引き起こします。症状としては、病気の進行とともに、尿の量が増え、回数が増えます。むくみや高血圧、食欲不振や吐き気、けいれんや意識障害、呼吸困難、貧血などがあります。生命維持のためには放置することはできません。

家内が小夏を動物病院へ連れて行きました。その日は、普通に健康診断や体温測定をして、採尿してくるように言われたそうです。なかなか採尿は、難しい。オシッコしなさいと言ってすぐにしてくれるはずもなく、オシッコ態勢にはいったところで採尿カップをあてがいます。当然、嫌がって違うところにしてしまい採尿失敗。続けてオシッコしないので、また暫し散歩を継続。その間、採尿カップを家内は握ったまま。傍目には、きっと不思議な光景です。

それでもどうにか採尿して、病院へ持ち込みます。翌日検査結果が出るとのことで、また家内は小夏を連れて動物病院へ。そこでショッキングな宣告が・・・。

「尿に血が混じってます。血尿です。腎不全です」と先生。
家内は、腎不全という言葉を遠くに聞いていたみたいです。


「とりあえず今日から食事制限です。この缶詰以外は与えないでください」と、先生、缶詰を2つ家内の前に差し出します。
「缶詰以外、他に何を食べさせてあげられますか?」と家内。
「この缶詰以外は、何も与えないでください」。
「いつまで、この缶詰だけなんですか?」。
間髪を入れずに先生、「一生缶詰だけです」と宣告。
家内、何も言えず落ち込んで病院を後にします。
小夏はいつもと同じようにニコニコしながら、時々、家内を見上げながら家路を急ぎます。

その夜、帰宅した私は家内の説明を聞き、同じく落胆です。ご飯大好きの柴犬に育ってた小夏が、おいしそうにドライフードを食べる姿をもう見れない。食べ物以上に、ほかにいろんな影響が出ないはずもない。これから、どんな一生を歩むんだろう。思わず涙腺が緩くなってしまいます。

小夏が近づいてきて、ご飯くださいなと催促します。普段は、もっと早い時間にご飯を食べていましたが、この日は家内が途方に暮れて、テーブルに缶詰を置いたままにしていました。

どれと缶詰を取り上げます。当時は知りませんでしたが、ヒルズの療養食K/D缶です。蓋を開けると、ペースト状のものが。三分の一ほど、小夏のお皿に取り分けます。鼓太郎にはいつもと同じドライフードを。

鼓太郎と小夏の食事台は横に並べてました。その食事台にならんで、お尻を揃ってこちらに向けてご飯を食べるのがいつもの風景です。今日も並んで食事台に。小夏が、自分のお皿と鼓太郎のお皿を見比べながらちょっと不思議そうにしてます。小夏は、ドライフードが好きなんです。逆に鼓太郎は、なんで小夏だけ缶詰なんだと、こちらも不思議というか不満そうです。

それでも、それぞれ自分のお皿に向かいます。小夏は、一口二口食べて、そして止めてしまいました・・・。食べてくれよ。これから、これしか食べれないんだから・・・。しばらく、そのままにして置き、私たちも遅い夕食です。ふと見ると、小夏の皿のご飯(療養食)を鼓太郎がおいしそうに食べ、小夏が鼓太郎のドライフードをばりばり食べてます。これには困りました。

それまでにも普通の缶詰を与えたことはありました。鼓太郎はもちろん小夏もよく食べてました。このK/D缶と何が違うのだろうと、鼻を近づけます。よくわかりませんでしたが、肉のにおいがあまりしない、おいしそうな匂いはしませんでした。腎臓の療養食だから、どうしてもこうなるんだろうなと納得せざるを得ませんでした。でも、鼓太郎は何故喜んで食べるのだろう?単にドライフードが嫌いなだけみたいです。

それでも仕方ないので、次から手に取って小夏の口に押し込みます。半分くらい吐き出します。頼むから食べてくれ!食べなきゃ衰弱してしまう。いつものドライフードを食べると腎臓が悪化してしまう。

当時、K/D缶は普通のペットショップで売ってなく、ネットで探すという発想もなかったので、病院に買いに行ってました。小夏も可哀想だけど、お金もどんどん飛んでいきそう(病院で買うと高かったんです・・・)。

そうこうしているうちに数日が経過。ふと気づくと絨毯の上に、小さな血のシミが。どこか怪我したのかと、鼓太郎と小夏の体をチェック。鼓太郎、異常なし。小夏も怪我はしてませんでしたが、股間から血が一筋。え、血尿・・・。それにしては、濃い。血尿ではなく、出血のようでした。悪化すると出血するのか?そんな話は聞いてない。

私が首を傾げていると、家内が「もしかしたら、小夏、生理が始まったんじゃないの?」と。

ん?確かに小夏は女の子だったが。

調べてみると、犬の場合、半年くらいから生理になるそうです。小夏はちょうど生後半年を過ぎたくらいでした。生理を迎えてもおかしくない時期です。うっかり何も用意してなかったから、明日でも買いにいかなきゃ。

と、そこでふと思いつきました。

「小夏の生理っていつ始まったんだろう?採尿した時に始まってたんじゃないだろうか?だとすると、採尿した中の血液って生理の血だった可能性あるんじゃないだろうか?」
「確かに可能性あるよね」
「よくわからないけど、腎不全だったら血液検査とかするはずじゃないだろうか?血液検査してないよね」
「うん、尿検査だけだった」
「本当に腎不全かぁ?」と、私の疑いメーターは期待も込めて急上昇。
「生理終わったころにもう一度採尿して検査してもらおう」。
「そうだね」

でも、素人の勝手な想像です。できれば腎不全でないことを祈る期待も満載です。このため、次の検査まではK/D缶を継続。小夏が鼓太郎のご飯を盗み食いすることは大目に見ることにします。

なかなか生理が終わりませんでしたが、ようやく出血もなくなってきたので、再度、家内に頼んで採尿。病院へ持ち込み、検査の依頼です。

小夏2005年1月頃 服を着るのが大嫌い、このスカートは生理パンツ・・・。

そして週末、私も一緒に動物病院へ。

「検査の結果はどうでしたか?やっぱり血尿ですか?」
先生、カルテを見ながら、「特に問題ありませんでした。血液は混ざってませんでした」
「ということは、直った?腎不全じゃないんですね」
「うーん、ちょっと一回だけじゃなんとも」
「え、でも一回の尿検査で腎不全って診断と処方しましたよね。一回の検査ではっきりしないのなら、なぜ断定できたんですか?」
「いや、それは・・・」
「小夏は、生まれて半年ちょっとなんです。この間、生理になりました。生理の血が検尿の時に交じってた可能性があると思うんですが、そういうことはないんでしょうか?」
「そういう可能性もあるかもしれません」
「今回、血尿ではなかったので、普通のご飯をあげてもよいんですね?」
「まぁ大丈夫でしょう」

私の中の不信メーターが怒りメーターに切り替わりつつあるのを感じたので、それ以上、話は続けませんでした。ただ、ダメだ!この病院じゃ!他の病院探さなきゃと思ってました。近所であるという利点は捨てきれないけれど、簡単な処置以外の病気は、違う病院を探すことにしよう。

怒りはありましたが、なんかすっきりして、病院を後にしました。私と家内の間を小夏が、時々見上げながら嬉しそうに歩きます。そうだね、鼓太郎が留守番しているお家に帰ろう。

今日は、小夏の好きなドライフードをちょっと大盛りで出してあげよう。

腎不全は小夏の病歴に刻まれることなく、誤診(?)による顛末で終りました。本当に腎不全だったら、その後の生活は大変な日々になっていたに違いありません。


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