人は時々、立ち止まり、立ち尽くして空を見上げることがあります。星を見るとか何か対象物があって見上げるのとは違い、特に何がある訳でもなく見上げるときがあります。見ることが目的ではなく、何か思いをはせる時に人は空を見上げます。
犬も同じように空が見上げることがあるのでしょうか?
記事内インデックス
犬も空を見上げるのか
鼓太郎が空を見上げた日
空の向こうに
あまり空を見上げている犬は見たことがありません。それだけに、鼓太郎がある日、空を見上げていた姿が今も忘れられません。
犬も空を見上げるのか
人間は、立ち止まって空を見上げることがありますが、犬は空を見上げることはあるのでしょうか?
小夏はよく上を見上げます。
でも、それは私の顔を見つめ何かを訴えるとき、オヤツくださいというように。上は見上げても、そこには見つめる対象が必ずあります。虚空を見上げるという事は、今のところありません。
鼓太郎に至っては、私のこともチラ見くらいでした。前や周囲に対しては憶病なせいか他の犬の何倍も注意深く見ていましたが、上やましてや空を見上げるという事はありませんでした。
わが家の二柴だけじゃないと思います。よそのワンを観察していても、空をじっと見上げて固まってるようなワンの姿は見たことありません。遠吠えする時は上を見ていますが、最近、遠吠えしている犬を見かけないです。
鼓太郎が空を見上げた日
鼓太郎は、子供の時から悩まされ続けてきた外耳炎が影響したのか、15才と7ヶ月の時に前庭疾患を患い、自力では立ち上がって歩くことができなくなります。一次的に回復し、自分で歩き回れるようになったのですが、再び歩いたり立ち上がることが困難になってしまいました。
子供の時から、お散歩命だったので、カートに乗せて外へ連れ出してはいましたが、自分の足で歩けないことが哀しい。私の足に寄りかからせて、私の足で前に押し出しながら歩いたりしていましたが、だんだんとそれも難しくなっていきました。
少しでも元気になればと、あまり行く機会はありませんでしたが、鼓太郎が大好きだった丘陵緑地へ連れていきます。
基本的に山道なので、歩くのは余計難しいと思いましたが、富士山が見える丘まで行くことができれば、ゆっくりと時間を過ごさせることができるのではと思いました。
山道にもかかわらずカートを強引に押しながら進みます。
カートの中に沈み、ずっと横になっていた鼓太郎ですが、ことこと山道を進んで少し開けたところで、急に立ち上がろうとします。もちろん、立ち上がれないので、手を添えてカートの中に座らせます。
私が手を出すとジタバタして嫌がるのですが、この時は、大人しく助けてもらうのを待ち、カートのなかでちんまりと収まってます。そして、何かをじっと見上げます。
そしてそのまま固まってます。いえ、空をじっと見つめています。
何をみているんだろう?鼓太郎の視線の先に、対象物になりそうなものはありません。鼓太郎の後ろに回り込み、鼓太郎の視線に合わせても、何もなし。
ただ、木々の隙間から空が広がっているだけ・・・。何を見ているの?と鼓太郎の顔を覗き込むと、何とも言えない、今まで見たこともないような表情。その表情のままで動かずにじっと空を見上げています。
同じ姿勢は長くは出来まいと思い、気の済むまで、そのまま空を見上げさせます。
でも、私の予想とは裏腹に、鼓太郎の姿勢は崩れず、じっとじっと空を見上げます。何の理由もありませんが、少し心配になって、鼓太郎を撫でます。
ハッとしたような表情を一瞬見せ、カートの中へふたたび沈んでいきます。
何を見ていたのか?何が見えていたのか?答えのないまま、目的の富士山の見える丘を目指します。
急な坂を登り切り目的の場所へ。
昔は元気に走り回っていましたが、それもかなわず、暫く芝生の上で日光浴をさせます。
そして、小夏と一緒の写真を撮ろうと再びカートに乗せます。
またです・・・。カートのヘリで体を支えながら、先ほどと同じように空を見上げています。私が手を貸したわけでもなく、自分でその体勢を取りました。
そして、また動かずに空を見上げる、仰ぎ見ています。目はつぶっていたようにも見えます。長い事、そのままの姿勢。
今まで、こんな感じで空を見上げるなんてことはなかったので、物凄く不思議な感じがしました。少しだけ、・・・嫌な予感もしてしまいました。
単に一番楽な姿勢だったのか?それとも何かを見つめていたのか?何かを考えていたのか?何かを思い出していたのか?
最後まで本当のことは分かりませんが、鼓太郎が空を見上げたのは、この日が初めてだと思っています。
空の向こうに
鼓太郎が空を見上げた日から、約一か月後、鼓太郎は空へ登っていきました。
あの日から、散歩にも連れだせない日も何日かあり、支えながらも歩く鼓太郎の姿は殆ど見れなくなりました。そして最後は安らかにとは言えませんが、私も家内も、そして小夏が見守る中、私の膝の上から鼓太郎は空の上へ旅立ちました。
その前日に、家内が鼓太郎を散歩の連れて行った時に、空を見上げて固まっていたそうです。家内も不思議な感覚にとらわれたそうです。
斎場で待つ間、することもなく、うっすらと空に登っていく煙を見ながら、気づけば今度は私が空を見上げていました。少しずつ、ゆっくりと空を鼓太郎が昇っていく。
同時に初めて出会った日のこと、てんやわんやだった子供時代、手を焼いた若犬時代、小夏を一緒に迎えに行った日、そしてだんだんと弱っていった日々など。いくら時間があっても、想い出はつきません。
空を見上げながら、色んな鼓太郎の想い出を自分の中にしまい込んでいきます。空に鼓太郎の笑い顔が溶けて消えてゆく。そして空の向こうに、駆けていく姿も溶けていきます。
空の向こう、私には見えっこないその先で、何時か私が行くまで待っててくれるのかな、なんて考えながら・・・。
書いているうちに少々、湿っぽくなってしまいました。
犬は人間と同じように感情を持ち、喜怒哀楽を示します。人間ほどではないにしても、何か感情を揺さぶる時、覚悟を決めた時には空を見上げるのかもしれません。鼓太郎が空を見上げた時に、それまでの犬生を振り返り、何か覚悟を決めていたのかもしれません。空の向こうに初めて見る風景を見ていたのかもしれません。
まもなく16才の誕生日を迎える小夏は、まだ空を見上げたことはありません。
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空を見上げた鼓太郎君の写真を何度も見ては、ぼろぼろになってしまいました。
時々、全てわかってる(感じてる)んじゃないかと思うことがありますね。
私にとっても、『禁断の写真』なんです・・・。でも、とても大事な一枚です。
ずうっと、何を見て何を思ってたのか、知りたく理解したいのに、絶対答えは返ってきません。
犬は人間よりも、『生きる』ことには、はるかに正直で、そして敏感だと思います。
ネコ二匹としばいぬラッキーと暮らしていました。ムスコは巣立ち今は十五歳になったラッキー(おんなのこ)とまったり暮らしています。去年9月にラッキーは口腔ガンの手術をしましたが転移再発なく元気にごはんを食べてくれています。空を見上げる虎太郎くんを読んでとてもココロに響きました。ありがとうございます。小夏ちゃんの平穏な日々を祈っています。ラッキーとワタシも頑張ります。ありがとうございました♥応援しています♥
ラッキーハハさん
はじめまして。返信が遅くなり申し訳ありません。
一緒に暮らし始めた時から理解してたはずなのに、いつの間にか自分の年齢を追い越して老いて行く姿を見るのはちょっと寂しく悲しく感じてしまいます。
でもそれも大事な想い出の日々。この記事は、空を見上げている鼓太郎に違和感を感じた日の想い出を妄想を込めながら書きました。ちょっとほろ苦い想い出です。
老犬になって穏やかな静かな時間が増えましたが、時々、違う行動や表情を見た時のことはずっと記憶に残っています。
ラッキーちゃんも、これからまだまだ若犬時代と違う表情や行動を見せてくれると思います。
元気に想い出の時間をたくさん積み上げて行ってください。
小夏は、二十歳までは頑張る予定みたいです。