書くのを躊躇い続けた認知症のこと②睡眠導入剤

認知症になっていろいろな症状が出てしまい、それに応じた世話が必要になります。比較的軽微な世話もあれば、世話する人間の方にも肉体的、精神的に辛いものもあります。わが家における最大の悩みは、夜鳴きでした。

記事内インデックス
一緒に暮らす人間にも辛い夜鳴き
精神安定剤を使用
睡眠導入剤(いわゆる睡眠薬)の使用
睡眠導入剤の効果は限定的

躾などで改善ができる幼犬期の夜鳴きとは訳が違います。認知症による夜鳴きに絶対的な対処方法、改善方法はありません。

夜鳴き、そして図らずとも使用した睡眠導入剤について取り上げてみました。

一緒に暮らす人間にも辛い夜鳴き

わが家の鼓太郎の夜鳴きは、認知症由来の物なのかは、実ははっきりしません。狭い隙間にはまるようになり、そして徘徊行動へと認知症であることが顕著になる過程で、夜鳴きは始まりましたが、まだ本格的にはなっていませんでした。

ひどくなってきたのが、認知症に加え、前庭疾患を発症した後です。前庭疾患で思うように動けなくなってから、要求吠えの意味もあったのかもしれませんが、夜鳴きが一段とひどくなりました。

夜鳴きは、まず昼夜逆転から始まります。

ドアにはまってる鼓太郎。前にも後ろにも行けず、諦めて固まっています。いつからはまってたの?

昼間であれば鳴かれても、それはそれで問題あるものの、まだましです。しかし、深夜に鳴かれ始めると私たちの睡眠障害でもあり、ご近所迷惑になります。人間と共に暮らしている以上、昼夜逆転は生活サイクルを破壊しかねないものです。

実際に鼓太郎の夜鳴きが始まってから、私と家内はほぼ寝不足の日々が延々と続きます。当時まだ会社員だった私は、夜鳴きする鼓太郎に付き合いながら、「今日は何時間寝れるのか?自分の体力はもつのか?」と不安を感じてました。昼間に鳴くことはなかったので、家内は昼間に鼓太郎と一緒に寝てはいたようです。そんなこともあり、夜間は私よりも長く鼓太郎に付き添ってくれていました。

しかし、寝不足に陥るとだんだんと精神的にも余裕がなくなってきます。本当は優しく鼓太郎を介護してあげたいのですが、時にはつらく当たってしまったこともあります。自己嫌悪ですが、それだけ余裕がなくなってしまいます。

鼓太郎はと言えば、鳴くだけ鳴き、疲れ果てるとぱたっと寝始めます。

もちろん認知症になり、自分でもわけわからず夜鳴きをしている苦しみはあります。でも夜鳴きによるストレスや疲労は、一緒に暮らす人間の方が大きいと思っています。これは、同じような経験された方にはわかっていただけると思います。決して、愛犬を蔑ろにしている訳でも、虐待思考でもなく、あくまでも事実です。

犬と暮らすということは、こうした状況に陥ることも覚悟しておくべきかもしれません。

精神安定剤を使用

夜鳴きを放置することもできず、自己流で付き添って撫でることでは効果もないようなので、病院へ行き先生に相談します。

状況を説明すると、先生も少し困った表情を浮かべながら、「すぐに認知症の夜鳴きを改善できるような処置や薬はないんです。少しずつ症状が治まることもありますが、何をどうすればという答えはありません」。

確かに人間でも認知症の治療方法は確立されていないのに、犬の認知症の治療方法があるわけもありません。

「鼓太郎も辛そうだし、私たちもかなり辛いし、なによりも近所迷惑がこわい。何か多少でも和らげる手段はないのですか?」と、ないものねだりとはわかっていても、何か妙案がでないかと聞きます。

「どこまで効果あるかわかりませんが、安定剤を使ってみますか。常用するのではなくて、夜鳴きが始まったら飲ませてあげるような感じで、効果あると良いのですが。飲ませても効果ないようでしたら、また来てください」。

昼夜逆転のせいで、昼間はいつも眠そうな顔。散歩の時も、夢うつつ。

少し光明が見えたような気が・・・。でも、体に負担ないのか?この頃、鼓太郎はだいぶ痩せてきていたので、心配です。負担ないわけないよね・・・。

「錠剤を半分にしてあります。ひどく鳴き始めたら、この半錠を飲ませてください。30分以上たっても効果なかったら、もう半錠。それでも効果でなくても、それ以上は飲ませないでください」。

帰宅して、夜を待ちます。出来れば、薬は使わないに越したことはない。夜鳴きしないでくれよ。

しかし、祈りむなしく深夜の丑三つ時。鼓太郎の夜鳴きが始まります。でもなぜ、いつも丑三つ時なんだろう?お化けが出てきて取り憑くんじゃないか?と馬鹿なことを考えながら、もらってきた薬を取り出します。どうにか嚥下させて、様子を見守ります。

確かに少し大人しくなり、夜鳴きは弱まります。が止まりはしませんでした。続けて飲ませるのも憚られ、いつものように鼓太郎の横について体を摩ります。

翌日もその翌日も同じような感じ。そして追加でもう半錠を飲ませても、あまり効きめがないように感じました。多少の効果は認めるものの、状況が緩和されたとは言い難い。

安定剤じゃ駄目だな・・・。

睡眠導入剤(いわゆる睡眠薬)の使用

再び、病院へ行き先生に相談します。

余程、私が疲れ果て困った顔をしていたのか、先生は「うーん、安定剤はあまり効きませんか・・・。できればお勧めしたくないんですが、睡眠導入剤を使いますか。でも、あくまでも一時しのぎですよ」と。

ん、導入剤?いままでもらっていた安定剤とは違うのか?

「安定剤よりも、さらに強力で即効性があります。つまり、今までの薬よりも強い薬になるので、できるだけ使わずに済めばそれに越したことはないんです。副作用の可能性は当然あります」。

自分の犬小屋の入り口で力尽きて音てしまった。あと数歩移動すればよいものを。それができない。

そう言われると誰でも悩みます。精神安定剤を使うようになった頃、鼓太郎は歯周病も急に悪化していてステロイド剤も服用していました。薬を飲ませるようになってから、体重の減少が気になっており、できるだけ使用は控えていました。さらにここへ薬が増えたら・・・。

返事に詰まっている私を見て、先生が「薬はお出ししますが、できるだけ、本当にどうしようもない時だけにしてください。一日に一回だけ、それ以上は使わないでください」。

何か、素直に「ありがとうございます」とも言えずに、黙って薬を受け取り帰宅します。

睡眠導入剤の効果は限定的

導入剤を打け取ったけ時に、先生から、「即効性はありますが、持続性はあまりありません」と言われ、さらに、「服用するたびに、だんだんと効果がなくなっていきます。効きが悪くなっていきます」とも言われました。

悩みます・・・。

錠剤を1/4に割ったものが、先生の指定した一日分(一回分)です。こんなかけらで効果あるのだろうか。

朝散歩の時は、いつも眠そう。それでも散歩命の記憶が残ってるのか、寝ぼけながらもカートから降りようとします。カートから身を乗り出しているところ。

そして、恐怖の悩ましい時間帯。一応、布団に入って寝ていましたが、やはり午前二時過ぎ。「わおおおーん」、鼓太郎の大声が狭い家の中に響き渡ります。慌てて飛び起き、別室のサークルの中にいる鼓太郎の所へ。隙間にはまって助けを求めている訳ではありません。何があるという訳でもありません。それでも絶叫に近いような吠え方。お隣や上の階の人が起きちゃう・・・。

鼓太郎の横について、体を摩ってあげながら、「大丈夫、大丈夫」というしかありません。摩ってあげるだけで、少し収まることもあります。でも長続きしません。少し間を空けて、大絶叫。

思わず、もらってきた睡眠導入剤に手が伸びます。手にした睡眠導入剤を見つめ、暫し固まる私。使った方が良いのだろうか?

一時間ほど鼓太郎に寄り添いながら、明日、仕事の時眠いだろうなぁ、そもそも朝起きれるかなぁと、とりとめもなく色んな不安がよぎります。その間も、鼓太郎は数分おきに、間歇的に大絶叫。マンション住まいゆえに、もはや限界。

睡眠導入剤を取り出し、鼓太郎に投与。手を噛まれながも(認知症になってから、咬み方がひどくなりました)何とか嚥下。少し様子を見ます。

様子を見る間もなく、鼓太郎すとんとサークルの床に崩れ落ちます。

え?ええっ?

初めてゆえに、こちらの動揺の方が大きい。大丈夫なのか。こんな早くに効いちゃうのか?思わず鼓太郎の鼻先に耳を当てると、すうすうと寝息が聞こえます。心音も確認。落ち着いているみたいです。

あっという間に、不自然ですが、眠りに落ちたみたいです。あんなかけらなのに。言葉を返せば、それだけ強い薬の証拠です。やっぱりできるだけ使わないようにしたいと思います。

朝散歩で自分で歩く気のない時、歩けない時は、夜の時間の寝不足もあり、カートのへりに顎を乗せ、揺れるカートの振動が気持ちよさそうに寝てました。昼間は鳴きも吠えもしませんでした。

寝込んだ鼓太郎を暫く撫でて、私も自分の布団に戻ります。3時間くらい寝れるかなとうとうとして居たら、再び鼓太郎の声。薬の持続性は短いようです。そのまま寝付いてくれると思いましたが、薬で眠っていただけみたいです。でも、今日は、もう薬は使えない。

鼓太郎のサークルの中で一緒に朝まで過ごすか・・・。

睡眠導入剤の即効性と強力な効果はわかりましたが、あくまでも短時間しか持たないことを理解しました。その後、使用は抑制しながら、家内と交代で寝ながら鼓太郎の夜鳴きとの戦いの日々は続きました。

睡眠導入剤の効果は限定的です。一種の緊急用、非常用的に使うことはありです。でも、根本的な問題解決にはつながらないので、過度の期待や依存はできませんでした。これだけ強い薬が体に良い訳もない、と当時思った記憶があります。

 


わが家がマンション住まいでなく、一軒家であれば、夜鳴きがひどくなっても睡眠導入剤を使用することはなかったかもしれません。東京の片田舎とは言え、そしてマンション住まいゆえに、夜鳴きをわが家範囲だけの問題にすることもできませんでした。近所迷惑にならないように、そして自分たちと鼓太郎にとっても少しでも穏やかな時間をと考える中で、睡眠導入剤も少し使用することになりました。

でも薬を使用するたびに、素人目ですが、鼓太郎の体力が落ちていくように感じ使用は限定、効果も限定でした。

夜鳴き対策で、わが家では他にも防音部屋(小屋)を作ったりしました。次回、この防音部屋(小屋)のことを取り上げてみます。

 

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