リーダーシップ状況適合理論2 SL理論など


状況適合理論の登場で応用、実用研究は百花繚乱へ

前回に引き続き、リーダーシップ状況適合理論に属するものを3つほどご説明します。行動理論の時は、リーダーシップ行動を突き詰めていくように色々な研究がされましたが、状況適合理論では、その行動理論の成果をもとに、より現実的事象へ拡散的に研究が進んだように理解しています。実用へ向けた視点の付加により、理論研究は百花繚乱、興味深い意味あるものが並びます。

ページ内INDEX
1. ブルーム・イエットンモデル
2. SL理論

3. 代替性仮説
4. 状況適合理論が実務的展開を後押し
5. まとめ

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リーダーシップ状況適合理論2 SL理論など

1. ブルーム・イエットンモデル

Vroomは動機づけ理論の期待説でも有名な学者ですが、彼がYettonと共に1973年発表したのがブルーム・イエットンモデルです。リーダーシップスタイルを管理者の意思決定モデル(規範的意思決定モデル)に結び付けて、いろいろな意思決定、問題解決の状況下でどのようなスタイルが望ましいかという行動選択をモデル化したものです。

まず意思決定おけるスタイルを3区分、5タイプで示します。下図の独裁型、協議型、集団型が区分でA1からG2までの5つがタイプです。

独裁型 Autocratic leader リーダーが単独で決定
A1:リーダーは入手済の情報をもとに単独で意思決定。
A2:まずメンバーなどから情報を入手し、リーダーが単独で決定。

協議型 Consultative leader チームで協議しリーダーが決定
C1:メンバーから個々に意見を集め、その後リーダーが決定。
C2:メンバーを集めて意見収集し、その後リーダーが決定。

集団型 Group-based leader チーム全体のコンセンサスで決定
G2:複数メンバーと議論し、合意に基づき決定。

ブルーム・イェットンモデルでは、意思決定のために十分な情報があるか、決定のメンバーの受け入れは重要か、目標の共有状態など、7つの設問への回答により、状況を診断できるディシジョンツリーも用意されています。そして各状況に対して適した意思決定スタイル(A1からG2)を提言しています。

メンバーの合意や情報の共有が欠くことのできない状況ほど参加的なスタイルが適合的で、その逆になるほど専制的なスタイルが望ましくなるということを主張しました。さらに後年のモデルの見直し時には、考慮に入れるべき重要な要素の1つとして時間(スピード)を追加しました。

意思決定という側面からリーダーシップを捉えたこと、メンバーの参画がメンバーの動機づけにつながることなど、それまでと異なる視点で状況適合のリーダーシップを考えた所が、斬新でありその後の実務的な展開につながるモデルと思っています。

2. SL理論

SL(situational leadership theory)理論は、1977年にHerseyBlanchardが提唱したリーダーシップ条件適応理論の1つです。メンバーの成熟度(maturity)により、有効なリーダーシップスタイルが異なるという考え方で、Fiedlerのコンティンジェンシー・モデルの状況変数をさらにブレークダウンし抽出したメンバーの成熟度だけを状況として考えた理論です。

メンバーの成熟度は、仕事をする能力・スキル仕事に対する意欲・責任とで4段階から捉えられています。

その上で、リーダーの行動を縦軸を仕事志向(指示的行動)横軸を人間志向(援助的行動)の強さとして4象限に分け、それぞれの状況(メンバーの成熟度)で有効なリーダーシップスタイルがどのようなものなのかを示しています。

下図において、黄色の矢印で示しているのが、メンバーの成熟度の変化を示します。メンバーの成熟度が一番低い場合には、S1教示型のリーダーシップスタイルが有効で、メンバーの成熟度が一番高い場合には、S4委任型となっています。

4つのリーダーシップスタイルは、それぞれ次のようになります。

S1 教示型(仕事指向が高く、人間指向の低いスタイル)
具体的な仕事の進め方、手順を指示し、管理監督する
→メンバーの成熟度が低い場合

S2 コーチ型(仕事指向、人間指向ともに高いスタイル)
リーダーの意向や考えを説明し、疑問に答える
→メンバーの成熟度が平均的な場合

S3 援助型(仕事指向が低く、人間指向の高いスタイル)
メンバーとリーダーの考えを合わせ、メンバーが自ら決められるように援助する
→メンバーの成熟度が高い場合

S4 委任型(仕事指向、人間指向ともに低いスタイル)
仕事の遂行責任を委ねる
→メンバーの自立度、成熟度が明らかに高い場合

SL理論は、メンバーの成熟度の発達変化に合わせて、リーダーシップスタイルを変化させることを示しているため、ライフサイクルモデルと称されることもあります。非常にわかりやすく、実感を得やすいことからも、現在もこの理論をベースにしたトレーニングプログラムが多々見られます。

3. 代替性仮説

代替性仮説は、KerrJermierが1978年に提唱した状況適合理論の一つです。組織やチームにおけるさまざまな状況的要因が、リーダーシップの代わりとして機能するという考え方です。他のリーダーシップ理論や研究と少し趣が違うように個人的には感じてますが、内容はものすごく気に入ってます。

この仮説でリーダーシップを代替する状況として、メンバー特性仕事特性組織特性があげられています。

また、この仮説からは、次のような状況が整えば、リーダーは不要ということも示唆されます。SL理論でもS4委任型状態にメンバーの成熟度が高まると、リーダーの役割機能はかなり狭められていますが、代替性仮説ではその他の状況も取り上げています。

① メンバーが成熟すること(SL理論のS4)
② メンバーの内発的に動機づけられていること(SL理論のS4)
③ 課題解決の方法が明確化されていること
④ メンバーが心理的にチームとしてまとまっていること

例えば、高度な機械化・ロボット化の進展により人間と機械との関係が自動化されていると、機械が仕事手順を指示し管理することで、リーダーシップの機能が代替されている現実などを考えるとイメージが湧きやすいと思います。

この考え方をさらに拡張していくと、仕事中心のリーダーシップ行動は他のものへどんどん代替され、最後には人間中心のリーダーシップ行動だけになると言えます。最近のリーダーシップの傾向が、対人的なソフト面に重点が置かれている理由をこの仮説は整理してくれたと考えています。

4. 状況適合理論が実務的展開を後押し

前述のように行動理論の段階は、リーダーとしての有効な本質的な行動を突き止めるべく収束的な展開が図られています。結果的に、抽出された行動だけでは説明が難しかったり、有効性の関係も十分説明できなかったり、対象外のおかれた実は有効な行動なども存在することになりました。

行動理論の批判ではありません。リーダーシップを考える上で、その根幹的な部分の整理に行動理論はかかせず、その意義は非常に大きいと思ってます。期待される役割は十分に研究されたと思います。

状況適合理論も、行動理論を否定的に捉えたものはありません。行動理論に沿いながら、その考えの上に別の視点を加え展開されたものです。リーダーシップ理論の話をしていると、特性理論、行動理論、状況適合理論をそれぞれ独立の異なる考えとする方がいますが、これらは密接に関係し合っています。

リーダーシップ理論として、現実の事象を解明する上で、どの理論フェーズも必要なステップであり、時間軸の早い理論研究がなければ、その後の理論研究の成果も半減したものになっていたに違いありません。

状況適合理論以降、さまざまなテーマや状況に関する個別のリーダーシップ理論が登場しています。どの理論や考えも、斬新で画期的なものですが、そのベース部分には特性理論、行動理論、状況適合理論で明らかにされてきた考えやコンセプトが流れていることに気付かれると思います。

基本や基礎が確立して、初めて応用や発展が可能になります。

5. まとめ

状況適合理論に属するブルーム・イエットンモデル、SL理論、代替性仮説についてご紹介しました。

状況適合理論の展開期は、行動理論で説明がしきれなかった現実の事象、リーダーシップにさまざまな視点の付加が試みられています。こうした試みが、結果的に実務への応用や活用を容易にするものへと変化させてきたと思います。

今現在、各種リーダーシップ関連の書籍やトレーニングプログラムも、この状況適合理論の流れの中にある物が多くなっています。それも、実際に現場組織で働く方々に納得感のある物だからに違いありません。リーダーシップをより身近なものとして受け入れ、そして活用することができるようになった境目だと思います。

次回からは、状況適合理論以降、多々出てきている各種のリーダーシップ理論について、代表的なものを取り上げてご説明します。

 

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