変革のリーダーシップ コッター理論

” リーダーシップは社会科学において最も多く研究された分野だが、未だ最も解明されていない分野でもあるBurt Nanus

状況適合理論、パスゴール理論の登場により、リーダーシップ研究の基盤はほぼ固まりました。その基盤の上で、さまざまなテーマやコンセプトに基づく研究や主張がされることになります。現在、私たちが見聞きすることが多いリーダーシップは、こうしたテーマやコンセプトに基づくものが多くなっています。

実に多くの研究、主張がされ、どれも珠玉というべき魅力的なものばかります。ざっとあげても以下のような考え方や主張が並びます。

・変革のリーダーシップ
・トランザクショナル・リーダーシップ
・サーバント・リーダーシップ
・ビジョナリー・リーダーシップ
・EQリーダーシップ
・カリスマ・リーダーシップ
・オーセンティック・リーダーシップ
・リーダーシップ幻想論  など

これからしばらく、これらのテーマ別、コンセプト別理論について取り上げてみます。今回は変革のリーダーシップの中で、コッター理論を説明します。

ページ内インデックス
1. 状況適合理論から変革のリーダーシップへ
2. 変化と変革の違い
3. コッター理論の概要
4. まとめ

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1. 状況適合理論から変革のリーダーシップへ

テーマ別リーダーシップ論の中で、まず注目すべきは変革のリーダーシップです。いろいろなテーマ別リーダーシップが論じられてきましたが、他の考え方の中にも反映され、そして現在のビジネス環境においても重視されるテーマです。

変革のリーダーシップは、それまでの「リーダーシップとは何か」という要因や構造を明らかにするようなアプローチではなく、「組織の変革を進めるためには何をすべきか」から出発しリーダーシップの重要性に迫り、その要因や構造を明らかにする逆方向からのアプローチともいえます。

また、変革のリーダーシップ(transformational leadership)へ展開していく過程には、その橋渡しとなった重要な考え方があります。

それが、リーダーシップとマネジメントの区別です。Zaleznikは、リーダーとマネジャーは異なる仕事にも関わらず、多くの人が同一視していた事に疑問を呈し、その区別を明確にしました。
まず、マネジャーは 問題の解決者であり、リーダーは問題の創出者と明確にその役割を区別しました。
その上で、ゴール(目標)、仕事観、人との関わり方(コミュニケーション)、人的特性の4つの視点から リーダーとマネジャーの違いを論じました。
このZaleznikの考え方は、その後の変革のリーダーシップ理論をよりクリアに変革者の役割や特性を示しやすくしてくれました。

また、変革のリーダーシップの理論登場には、時代的な要請、背景もあったと考えられます。

変革のリーダーシップは、1980年代に米国で数多く登場しています。この時代の米国経済を振り返ると分かりやすいのですが、双子の赤字に悩まされ、経済の停滞期にありました。経済、貿易面で日本企業が圧倒的な力で世界市場を席巻し、ジャパンアズナンバーワンという書籍も出ていました。その結果、日米貿易摩擦の激化、ジャパンバッシング(アメリカ人が日本車をハンマーでたたき壊す悲しい映像もありましたが)そしてプラザ合意へ続く時代です。そうした中で、米国の産業や企業自体も自らの変革の必要性が唱えられていました。そうした時代の中、変革のリーダーシップが次々と論じられたことは自然な流れです。

それ以前の純粋に学術的関心からの理論とは少々趣が違い、直面している現実的な必要性からの理論というのは、言いすぎでしょうか?

2018年現在の米中貿易戦争(戦争というワードは使いたくありませんがマスコミが好んで使うので通じやすい)と1980年の日米貿易摩擦は似た様相も呈しています。そう考えると、また新たな変革のリーダーシップ論が登場するのではと期待してしまいます。

2. 変化と変革の違い

あえて記述する必要ないかもしれませんが、少し蛇足的に記しておきます。組織における変化と変革は意味合いが異なりますが、一般的には混同して用いられています。と言うよりも、無意識にニュアンスの違いで使い分けているようにも感じますが、殆ど区別なしに同義語としてることが一般的には多いようです。

変化 change
組織における変化とは、組織内部の権限関係や権威を分散させたり集中させたり、コミュニケーションの流れ、業務プロセスを変えたりするなど、組織内部の構造や制度をを変えること。

変革 transformation, innovation
組織における変革とは、その組織にとって新規と認知される物、サービス、技術、アイディア、行動などを採用すること。

学術本的な文章だと難しくてよくわかりません。簡単に「変化<<変革」程度の理解でも良いような気がしています。変革の実現には、いろいろな新たな変化を積み上げていくというイメージで良いかと思います。

3. コッター理論

さて、変革のリーダーシップ理論(transformationa leadership)の中で、一番よく知られているコッター理論について説明します。

コッター理論は、1988年に米国のKotterによって発表されました。大きく次の3つの内容で構成されています。

i.  リーダーシップとマネジメントを区別し、変革にはリーダーシップが重要。
ii. 変革には、ビジョンが最重要であり、変革実現のための8ステップを提唱。
iii.リーダーには対人スキル情熱が不可欠。

i. リーダーシップとマネジメント
80年代以前では、組織経営にはマネジメントによるコントロールが効率的に取れていること重視されてきました。しかし、企業組織を取り巻く環境が逆風にさらされる時代、変化の激しい時代においては、マネジメントが一種の逆進効果を生むようなケースも見られました。

このため、それまでマネジメントと混在されて捉えられがちだったリーダーシップをマネジメントと明確に区別し、その上で時代にあった企業組織の変革を進めるためには、リーダーシップこそが重要と主張しました。

但し、マネジメント自体は全否定するものではなく、リーダーシップと共に組織内で必要なものととして、それぞれの期待役割と関心領域の違いを明確にしました。

図1 リーダーシップとマネジメントの区別

簡単に言えば、リーダーシップは攻め、マネジメントは守りというイメージです。

ii. 変革の8段階
急激なビジネス環境の変化は、そこでビジネスを展開する企業組織にも同様の変化を要求します。その要求に堪えられない企業組織はゆでガエル症状のまま退場を余儀なくされてしまいます。

私たちを取り巻くビジネス環境は、常に変化に晒された厳しい世界です。そうした中で生き残って発展を継続するには、企業組織も常に変革を続けなければなりません。組織変革に有効なのがリーダーシップであり、この変革は8つのステップに沿って進めることが効果的としています。

図2 変革の8ステップ

日本においても、バブル崩壊以降は、継続的に続くビジネス環境の大きな変化の中で、組織変革は重要なテーマとして今日に至ってます。変わらなければ組織は維持できない。そうした流れの中でも、Kotterの変革の8ステップは、現在でも多くのケースで用いられています。

iii. リーダーに必須の対人スキルと情熱
Kotterは、変革を推し進めるリーダーにとって必要不可欠な特性についても言及しています。対人スキルと情熱です。

対人スキル
組織の変革は、リーダー一人で実現できるものではなく、組織の内外を問わず共感し行動を共にする人間が必要になります。そのため、多くの人間と効果的なコミュニケーション、関係構築は不可避です。その意味で、内向的な人は優れたマネジャーであっても、リーダー向きではありません。

情熱
変革を成し遂げるには、相当量のエネルギーが必要です。通常の業務レベルとは全く異なるタフな状況でも揺らぐことなく変革へ向け邁進できる、それだけのエネルギー・情熱が欠かせないわけです。それがなければ、組織を動かしビジョンを達成することは到底期待は出来ないというわけです。

しかし、こうした対人スキルや情熱は、なかなか事後的に開発の難しい部分があります。幼少時代、仕事の経験、経験した組織文化などの影響も大きいものです。となると変革のリーダーの候補になりうる人材はかなり限られることも事実になります。

ただ一方で、対象となる組織スケールによって、この度合いはずいぶん違うというのが現実的な実感です。組織の大きさ、組織構造のレイヤーなどによって、変革の難易度、要求レベルは変わります。相応レベルの変革を体験し、成功することで、少しづつこうした特性も身についていきます。

4. まとめ

2018年現在、日本の大企業の多く史上最高決算を実現しそうな勢いです。しかし、ビジネス環境は決して安穏とできるものではなくなってきています。近未来、いえ来年にも企業組織には再び変革が求められるかもしれません。それ以上に、現代ビジネスにおいては、恒久的に変革が要求されていると言うべきかもしれません。

コッター理論は、すでに30年前の理論発表ですが、現在にも通じます。変革のリーダーシップは、その後のリーダーシップの中心テーマとなっています。

組織内のリーダー、企業組織の今後、あるいはご自身の将来キャリアを踏まえ、リーダーシップ開発、その内容に今まで以上に注目すべき時期が来ているのではないでしょうか。

 

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