鼓太郎と小夏と一緒に暮らしてきたわが家は、ペット可マンションの一室です。築年数も行き、初期から暮らす家庭は、当時若かった世帯もすでに中年域。マンション全体としては、それほど高い水準ではないものの高齢化が進んでいます。ある時、マンション管理組合の理事の人と話をした時、「子供たち独立したお宅が多くなってきた。これから、そうした家ではペットを飼い始める人が増えるかもしれない」と。そうなんでしょうか?
確かに同居していた子供たちが独立して出て行ってしまうと、寂しさを感じることは大いに違いありません。それを紛らわそうとペットを迎え入れる可能性は高いのかもしれません。
しかしながら、それは実際問題として可能な、妥当なことなのでしょうか。と、少し疑問が湧いてしまいます。
子供たちが独立し残された親は、当然のことながら、それなりの年齢、高齢域に達しているかそれに近い年齢になっています。高齢者が、犬猫を子犬、子猫で迎えることがはたして可能か、ふと心配になってしまいます。
何が心配なのか?
犬猫も、今は長生きになっています。平均寿命も、15才に達してきています。体感的には、鼓太郎や小夏を見ているともっと長いと思います。そうしたことを考えると迎え入れる人間の方が、最後までちゃんと面倒を見れるのか、そこが心配になってしまいます。
「人生100年時代」とはいっても、それは寿命の話。100歳まで、健康に暮らせるという訳ではありません。個人差は大きいものの、普通の生活ができる健康寿命はもっと短くなります。健康でなければ、犬猫の面倒をみることはできません。
マンション内で犬と暮らしていた、暮らしている人とたまに「もしも、今一緒に暮らしてるワンが空に昇ったら、またワンを迎え入れる?」と聞くと、大概の人は「うーん、現実的には無理かな?自分の年齢を考えると、最後まで面倒みてあげれないかもしれない。自分は生きてはいると思うけど、散歩にも連れていけなくなってるかもしれない」という返事です。まだ40代の人は、自分の年齢のことは特に考えないようで、「空に昇ったワンが、いいよ!と言えば、また新しく迎え入れるかな」という感じです。
年齢によって考える点がかわるのは当然です。
50代の半ばあたりから、先々の自分の健康状態とそれに伴ってワンを世話できるかに関心が移る境目のようです。もし、55才で子犬を迎え入れたら、犬が15年生きるとしても、その時自分は70才。生きてはいると思っても、散歩に行けるか、犬の介護をできるか、やはりためらいは出てしまいます。
子犬と暮らしはじめることのできる限界年齢はあると思います。
限界年齢はどれくらいだろうか?
以前、別ブログでこの限界年齢を考えてみました。その時の記述をアップデートしてみました。私個人の勝手な見積もりですが、意外に良い線かなと思います。
前提の仮説
1. 日本人の平均寿命 男 81.25 女 87.32 (2018年)
2. 健康的に動ける年齢 男 72 女 74 (2016年:少し古い数字なので、平均寿命マイナス10年程度と想定)
3. 犬の平均寿命 20年(希望を込めて長めに)
計算式 (平均寿命)-(10年)-(犬の寿命20年)
これで計算すると、男は51才くらい、女は55才くらいが、私流の子犬と暮らし始められる限界年齢です。
もちろん、人により健康状態が良い悪いという個人差抜きです。でも、犬たちも長寿化に伴い、今は介護期間があるのが当たり前になっています。介護は、それ以前に比べると人間側の負荷は大きくなります。だから、実際にはもう少し下の年齢が限界年齢とすべきかなと思っています。
限界年齢を少し越えていて、それでもどうしても犬と暮らしたいのなら、子犬は無理だけどシニア犬を迎えることを考えてみましょう。保護団体の里親募集をみていてもシニア犬の里親は、なかなかみつからないらしい。これで少しでも多くのワンが幸せな時間を持てれば良いのですが。
ただ、保護団体では、譲渡に際して高齢者を断ることが多いようです。これももっともな話です。里子に出すワンが最後まで幸せに暮らせるようにという思いゆえです。
犬は人間がいないと生きていけない
いくら長寿化が進んだとはいえ、犬は人間に比べれば、ずっとずっと短い時間しか生きられません。その短い時間を幸せな時間にし、そして最後の時を看取ってあげるのは、一緒に暮らすことを決めた人間が背負うべき責任です。
そして、今の社会では、犬は自分だけで生きていくことはできません。
年老いた人が子犬と暮らし始めるのは、人間のエゴみたいな気がします。本当にその子の最後まで、あなたは健康でいられますか?
どうしても犬と暮らしたいのであれば、シニア犬を迎えるとか、自分が飼えなくなっても、自分の子供が面倒みてくれるなど、準備を整えておかなければなりません。それだけの準備と覚悟は必要です。
その後、わが家のあるマンションでは、若干、犬の数が増えました。でも、新しい犬たちは、いずれも若いご夫婦の家庭で暮らし始めています。お年寄りで新たに一緒に暮らし始めたところはないようです。