鼓太郎の幼犬期、若犬時代にもっとも手を焼いたのが、噛み癖と破壊行動です。噛み癖は、子犬の時は甘噛みと言われるように、たとえ噛まれてもそれほど痛くはありませんが、半年過ぎで歯が永久歯になり、体格も立派になり、力がついてくるとちょっと危険を伴ってしまいます。幼犬期にきちんと甘噛みや噛み癖を躾しておかないと、あとあと大変です。
わが家では、鼓太郎では失敗、小夏では成功となりました。
犬は、幼犬期に乳歯から永久歯に生え変わるため、歯茎がむずむずするようで、いろいろなものを齧ります。これが甘噛みの理由の大部分です。単純に甘えて、じゃれて噛んだりもします。程度の違いこそあれ、どんな犬でも子犬時代には甘噛みをします。
鼓太郎の場合は、ペットショップで初めて会った時から、ずいぶん噛みついてきました。子犬に対する予備知識が乏しかったので、こんなものかと思ってしまいましたが、どうも他の犬に比べて、すでに噛み癖が強かったようです。愛情表現、アピールの仕方が下手糞くらいにしか考えていませんでした。まだ、顎の力が弱かったので、甘噛みと思ってしまいましたが、立派な噛み癖を持った犬だったようです。(そのせいで、売り物にならず店頭じゃなくてバックヤードに置かれてたのかも?)
家に迎え入れてからも、歯が生え変わるまでの辛抱だと思い、噛んでも良いロープやら木製の骨やらガムやらを与えていました。それでも飽き足らずに、ゲージやらトイレトレイやらもガジガジと歯形を残しています。その頃、35年ローンで買ったばかりのマンションも壁の角やら家具やら、鼓太郎を迎えてから、たちまちみすぼらしく汚くなっていきます。流石に、いくら口が痒くても、少し躾けて噛むのを止めさせようとします。噛んでも良いものと違うものを理解させる、ことです。
まずは、噛まれて困るものをブロック。わが家では木製の「すのこ」をたくさん買って来て、壁の角の部分は二枚組み合わせてブロックです。やたら「すのこ」ばかり買う客だなとホームセンターの人には不審に思われたかもしれません。家具は、犬が嫌がる匂いスプレーなるものを試しましたが、鼓太郎は意に介さずガジガジ齧るので、すぐにギブアップ。家具と言ってもたいしたものないから、まぁ諦めることにしました。金属製のものは齧らないで、木製、プラスチック製ばかりを器用に見つけて齧ってました。
次にコマンドの入れ込みです。果てしなく時間がかかったような気がします。目的は、「イケナイ」だけですが、「イケナイ」はいろいろな状況が多いので理解するのが大変みたいです。なかなか進歩のない毎日の繰り返しです。言う事を聞かない時には、耳を私が噛んだり、マズルを齧ったりと少し荒っぽいこともしましたが、悲鳴をあげながらも噛み返してきます。そのうちに、マズルも大きくなり、私の口には入らなくなりました。また、食べ物に続いて鼓太郎に手を焼いて途方に暮れる日々です。
噛むのはストレスが溜まっていることが原因とも聞き、ゲージから室内フリーにもしました。でも部屋の中にあるものを、やっぱり片っ端から齧る、自分の所有物とばかりに齧る。鼓太郎としては、一人遊びしてるつもりだったようです。それでは散歩の回数を増やしてあげようと、一日三回の散歩にしてみました。散歩中は、楽しそうに何かを噛んだりすることはありませんが、家に戻ると相変わらずです。上手くいきません。
そうしているうちに、生後半年くらいになり乳歯が抜け始め永久歯に生え変わり始めました。確かに、むやみやたらに何かを齧ると言う事は減ってきました。生え変わった歯を見て、これで齧られたらたまらないと、再び躾、コマンドの入れ込みの日々です。そのせいかは不明ですが、平常時には齧ることが減ってきました。噛むことが減って来て気づきましたが、鼓太郎は意外にもビビりでした。何か嫌な事、怖いことがあるとパニックになるんです。この非常時にパニックになった時には猛烈に齧り、物を破壊します。私たちにも歯を向けます。非常時にパニックになると、わずかばかりの理性や判断力はどこかに行ってしまいます。
鼓太郎の非常時(噛む齧る時)
・病院へ行くことを悟った時、行った時
・耳そうじの時
・雷の音が聞こえた時(強い風が吹いたり、激しい雨が降るだけでもダメ)
・驚かされた時(寝ているときにタッチするだけで、驚いて攻撃します)
・嬉しすぎて大興奮した時
この非常時の時の噛み癖だけは、ほぼ生涯を通じて直りませんでした。ピークは、一番元気で力の強かった若犬時代(3才から5才ころ)です。ちょっと危険な柴犬?でも、よく考えると、自分から攻撃することはありませんでした。何か嫌な事、怖いことから自分を守るために防衛的に口を出す犬だったと思ってます。
防衛本能が強すぎたのか?わが家では安心できなかったのか?
シニア犬に入って暫くした8才頃には、パニックになって私たちに怪我させた後、我に返るのか、困ったような悲しいような顔をして、急にぶるぶる震え始めて、さも「ごめんなさい」といわんばかりに自分がつけた傷をずっと舐めるような行動が増えました。雑菌入りそうなので、途中でやめさせましたが、我に返った鼓太郎を叱るのは私もできなくなってました。
一方、いくつかの病気騒動以外は手間いらずだった小夏は、噛み癖は殆どありませんでした。少しだけ躾をしたような記憶は有りますが、殆ど噛まれた記憶はありません。何度か、私の足元で寝てる時に間違えて蹴飛ばして噛みつかれたり、鼓太郎とケンカしているときに間に入った時などに噛まれましたが、悩まされるというほどのことはありませんでした。
噛まれた時の痛み、本気噛みされたときの痛みですが、鼓太郎に噛まれたときは、骨ごと砕かれるような痛みが長く残りました。振りほどいた後も、ジンジンと数日は痛みが引かず、青あざになることが多かった記憶です。私は、不思議と出血することは少なかったのですが、その分、皮膚の内側を壊されるような噛み方だったと思います。顎の力の強さは、柴犬とは言え、やはり狼の血を引いているんだと思うほどでした。
小夏に噛まれると、ほぼ間違いなく出血しました。鼓太郎に比べて歯が細くて尖っているのか、ぷすっと皮膚に食い込むような感じです。出血して、大変に見えますが、鼓太郎との比較ですが、その後に痛みはあまり長引きませんでした。
わが家では、残念ながら噛み癖の躾は上手くいきませんでした。でも、もし迎えた子に噛み癖があったら、実体験として、できるだけ早い機会に根気よく直すのが大切です。