リーダーシップは、専制型なのか民主型なのか?
リーダーシップに関する研究では、古くから対照的な二つのコンセプトが論じられてきました。専制的リーダーと民主的リーダーです。行動理論では、この二つのコンセプト(次元)に基づく、いわゆる広義の二次元モデルの研究が行われました。代表的な行動理論、研究を今回と次回でご説明します。
ページ内INDEX
1. スタイル、タイプ、類型という表記について
2. アイオワ研究
3. オハイオ研究
4. ミシガン研究
5. まとめ
1. スタイル、タイプ、類型という表記について
リーダーシップについて、いろいろな文献を調べていると、リーダーシップスタイル、タイプ、類型など、同じような意味に取れそうな言葉が出てきます。初めて目にすると、何か違いがあるのかと少し悩んでしまいます。
結論から言えば、これらの言葉はすべて同義と理解して構いません。
学び始めの頃は、「だったら統一してくれよ」と言いたくなりますが、研究の時期や学者などが違うことや日本語に翻訳される時に色々な言葉が使われたため生じたことかと思っています。
但し、類型と特性は少し異なります。
類型(スタイル、タイプなど)
複数の特性を合成し分類したもの。
長所 全体的な把握が容易。大まかな傾向がわかりやすい。
短所 類型に当てはまらない部分やその中間型、混合型を見逃す。
特性(要因、因子、尺度など)
物事を説明する要素まで細分化したもの。
長所 細かな把握ができ、中間型や混合型なども説明や把握が可能。
短所 細かすぎるため、全体的な傾向把握、解釈が難しい。
良く言われる、信長型リーダー、家康型リーダーというのは、類型であり、信長型の所以となる特徴が特性ということになります。荒っぽい言い方ですが、いくつかの特性をまとめたものが類型と理解しておけば良いです。
2. アイオワ研究
アイオワ研究はレビン類型とも呼ばれます。
1939年にそれまでのリーダーシップ特性理論アプローチからの脱却を目指し、アメリカの心理学者Lewinがアイオワ大学で行った児童に対する実験に基づき、リーダーシップのタイプを専制型、放任型、民主型の3つの類型に分類したものです。
その中でLewinは、民主型リーダーシップが、チームの仕事の質、メンバーの意欲、チームワークに効果的な行動などに最も有効なリーダーシップスタイルとしています。
専制型リーダーシップ(独裁型)
・未熟で安定していない集団で、メンバーは消極的受け身
・メンバーは自ら行動しない(できない)
・リーダーが意思決定し、ルール、手順を逐次指示し監督
・トップダウン
放任型リーダーシップ(自由型)
・成熟度の高いメンバーと個々の目標が明確
・メンバーの行動にリーダーは関与しない
・意思決定、作業手順はメンバーが行う
・メンバーの自立性へ依存
民主型リーダーシップ
・メンバーは集団に積極的に関与
・リーダーの援助の下、集団としての方針、ゴールを決定
・作業の要領や手順は各メンバーに委任
・ボトムアップとディスカッション
専制的リーダーと民主的リーダーの視点で言えば、専制型が専制的、民主型が民主的、いずれとも異なる排反の型として放任型が付加されています。
3. オハイオ研究
オハイオ研究は、アメリカのオハイオ州立大学の心理学者Shartleらが世界大戦前から1950年代にかけて行った調査研究です。
リーダーの行動を測定する尺度の作成を目的に実施されました。
リーダーの行動を詳細に記述する質問票を用い、軍隊や民間企業の25,000人以上に観察調査やインタビューを行い、この調査から抽出されたリーダーの行動は1700に登りました。
しかし、多くの行動は最終的に2つの次元、構造作り(initiating structure)と配慮(consideration)に集約されています。
構造作り
組織集団が確実な成果を実現するように、組織集団の基盤インフラを整えたり、メンバーの課題管理を徹底する行動
配慮
メンバーとの相互信頼を築き上げ、組織集団のメンバーとより良い人間関係を構築、維持しようとする行動
専制的リーダーと民主的リーダーの視点で言えば、やや距離がありますが、構造作りが専制的、配慮が民主的に比較的該当すると思います。
4. ミシガン研究
ミシガン研究は、マネジメント・システム論とも呼ばれています。
ミシガン大学のLikertが、1961年に生保会社のフロントマネジャーに対して行った調査研究です。
調査結果を通じて、従業員(人間)指向と生産性(仕事)指向という二つの次元を導き、二つの次元の関係性から権威主義専制型(システム1)、温情主義専制型(システム2)、参画協調型(システム3)、民主主義型(システム4)という4つのリーダーシップスタイルを導出しました。
なお、二つの次元を専制的リーダーと民主的リーダーの視点で言えば、やや距離がありますが、生産性指向が専制的、従業員指向が民主的に比較的該当すると思います。4つのスタイルの方が、専制的リーダーと民主的リーダーによりフィットして理解できます。
また、Likertは、組織をシステムととらえ、マネジメントシステムと呼んでいます。これは、リーダーシップをリーダー個人ではなく、組織の機能と捉えている点に特徴があります。
権威主義専制型(システム1)
生産性指向>>>>従業員指向
・専制的な管理システムで、リーダーはメンバーを意思決定に参加させない
・メンバーは、強制力により動かされる
・強烈なトップダウン型
温情主義専制型(システム2)
生産性指向>従業員指向
・リーダーはメンバーをある程度信頼しているが、パワー関係は明確
・リーダーによって決められた範囲でのみメンバーも意思決定できる
・強制力により、メンバーを動かす
参画協調型(システム3)
生産性指向=従業員指向
・リーダーはメンバーを相応に信頼し、個別問題はメンバーに任せる
・双方向のコミュニケーション
・報償と認知、範囲限定の権限委譲や参画、強制力によりメンバーを動かす
民主主義型(システム4)
生産性指向<従業員指向
・リーダーはメンバーを信頼し、意思決定は広く組織全体で行われる
・コミュニケーションは上下のみならずメンバー間でも行われる
・全面的な参画によりメンバーは動機付けられ、広範な相互作用が実現
マネジメントシステムを少し無理がありますが、独自に作図してみました。イメージは合うでしょうか?
また、調査研究では、4つのシステムの中で、民主主義型(システム4)の組織の業績が最も高いことが示されました。リーダーシップと組織業績について触れられたのも、この研究の特徴です。
5. まとめ
リーダーシップ行動理論の初期の研究理論3つをご紹介しました。発表時期はいずれも古いものですが、その後の理論展開の中にもその考え方は底流として流れています。
現在の会社組織のリーダーについても、これらの研究で示された次元やスタイルだけで説明がつくことが多々あります。
3つの研究から導出された次元とスタイルを整理すると下記の通りです。
各研究の結果はよく似ています。少しずつ導出された次元やスタイルが整理され、細分化されていますが、その源流にあるのはやはりリーダーシップは、専制型と民主型です。対立価値関係にあるこの2つの次元の有効性は、今も100年近く前とも大きく変わっていないようです。
次回は、行動理論のPM理論とマネジリアルグリッドについてご説明します。