リーダーシップ理論の変遷


リーダーシップって何だろう?

「変化の時代にはリーダーシップが重要だ!」
「あの人のリーダーシップは優れているが、あいつはなっちゃいない」
「あんなリーダーの下で一緒に仕事したい」 などなど

いろいろなビジネスシーンで、リーダーシップは頻繁に語られます。

しかし、同じリーダーシップという言葉であっても、語り手によりその中身や内容は千差万別です。「それはちょっと違うのでは」と言いたくなるようなリーダーシップを熱く語る人もいます。聞かされる方も、相槌を打ちながらも、そうなんだろうかと思ってしまい、色々と混乱させられたりします。

リーダーシップは、一義的に「こうだ!」と定義し難い側面を持っています。学術的にも長きに渡り、さまざまな理論展開がされています。そうしたこともあり、実際の組織の中でも色々な考えがせめぎ合っているに違いありません。

 

今回から、リーダーシップ関連のテーマを連続して掲載することにします。

初回は、俯瞰的にリーダーシップの全体像を把握するために、理論的な展開、変遷の概略を説明します。

ページ内INDEX
1. リーダーシップの定義
2. リーダーシップ理論の変遷
3. 状況適合理論の登場後
4. 開発を阻む根強い決めつけ、誤解
5. まとめ

リーダーシップ理論関連記事
リーダーシップ理論の変遷
リーダーシップ行動理論1 アイオワ研究、オハイオ研究、ミシガン研究
リーダーシップ行動理論2 PM理論、マネジリアルグリッド、四次元モデル
リーダーシップ状況適合理論1 コンティンジェンシーモデル、パスゴール理論
リーダーシップ状況適合理論2 SL理論など

1. リーダーシップの定義

理論の変遷の前に、リーダーシップの定義を確認しておきます。これまた、色々な定義があります。考え方、好みで2つピックアップしてみました。わかりにくいので原文を少しいじって要約してます。

″ リーダーシップとは、組織(チーム・集団)のメンバーが受け入れる目標ゴールを設定し、その達成のために、メンバーの行動や態度を統合的に組み立て組織化し、それを一定水準以上に維持する組織(チーム・集団)全体の機能である (Stogdill)

″ リーダーシップとは、信念を創りだすことで、協働する個人の意思決定を鼓舞するような個人の力であり、後天的に開発可能な技術的側面と先天的に開発困難な道徳的側面とがある (Barnard)

Stogdillが機能としているのに対して、Barnardは個人の力としているのがおもしろいです。イメージ的には、Barnardの定義の方がより上位ポジションのリーダーであり、Stogdillは広い階層のリーダーであるようにも感じます。

好み的には、機能といっているStodgillの定義です。ちょっとわかりにくいですが、肝心なことは、リーダー個人の能力や資質、行動などではなく、対人的な関係の中で発揮される集団としての機能と言う事です。リーダーとリーダーシップは別物とした方が混乱は少ないと考えています。

ちなみに、リーダーは「組織を牽引し、組織のゴール(目標)へ導く人」です。

2. リーダーシップ理論の変遷

リーダーシップに関する理論研究は、20世紀初頭からさまざまな考えや概念がさかんに展開されてきました。組織行動論の中核に位置付けられる重要な領域です。テーマは、リーダーシップを何によってもたらされているのか、その要因は何かです。

実に多くの理論研究がありますが、その全体を俯瞰すると大きく3つの段階にわけて捉えることができます。時間軸でいうと古い方から特性理論行動理論状況適合理論です。

特性理論
最も初期の研究アプローチです。
「生来、人間が持つ特性(trait : パーソナリティ、資質)により、リーダーシップの発揮度、効果は変わる」という考え方で、リーダーとフォロワー、優秀なリーダーと平凡なリーダーの違いを特性(性格や資質)によりを説明しようとしました。
しかしながら、パーソナリティを具体的な要因に分解することが困難だったこと、優秀なリーダー間で共通する有意な特性を見いだせなかったことなどから、科学的な統一理論には至りませんでした。
このため、リーダーシップの本質を把握するためには、特性理論だけでは不十分と考えられ、新たな視点からの次のアプローチが求められました。

行動理論
優れたリーダーと平凡なリーダーの行動の違いを研究し、識別することで、有効なリーダーシップ行動を体系的に明らかにしようとした理論群です。
「リーダーシップは生来の資質で良し悪しが決まる」と考えた特性理論に対して、行動理論では「リーダーシップは生来のものではなく、発揮される行動により良し悪しが決まる」と考えます。
優れたリーダーシップを発揮するのは、本人の努力とは関係なく先天的な特性で決まるという特性理論に対して、後天的に学習や努力により有効な行動を体得できれば優れたリーダーシップを発揮できるということになります。
このため、優秀なリーダーの行動を観察し、平凡なリーダーにもそれを見習わせることにより(role model, shadowing)、リーダーシップ開発を進められる可能性が出てきました。
行動理論の一番の意義は、このリーダーシップ開発の可能性を示唆した点にあります。特性理論では、開発の余地は殆どありません。優秀なリーダーは選抜による発掘か、他所からの新規採用しかないことになります。しかし、これらの手段で優秀なリーダーを必要数だけ確保することは、非常に困難です。
行動理論の立場から、平凡なリーダーであっても、有効なリーダーシップ行動を体得できれば、リーダーとして活躍することが可能となる点が画期的でした。
しかし、行動論はそれ自体に弱点もあったため、本格的なリーダーシップ開発へフォーカスしていくには、次の状況適合理論の登場を待つことになります。
弱点は、リーダーシップ、リーダー像を固定化してしまうことにありました。

状況適合理論
優れたリーダーシップ発揮には、特定の特性や行動が要求されるのではなく、リーダーが置かれた状況や条件に応じて、最適なリーダーシップ行動を適宜選択し実行することであるという理論です。
行動理論よりも、少し複雑になります。状況の判断能力もリーダーには必要になってきます。また、状況別の違いに対応できるように、リーダーシップ行動のレパートリーも必要になります。
難易度は高まりますが、より柔軟に、ケースに応じた効果的なリーダーシップ発揮が期待できます。

特性理論、行動理論、状況適合理論を簡単にまとめると下図のようになります。

なお、主な理論研究については、次回以降の記事で代表的なものを順次、取り上げて説明していきます。

また、図中にコンピテンシー系のリーダーシップは入れてません。人によって批判も多かったいコンピテンシーについては、相応のスペースを以って別の機会に述べたいと思います。簡単に言うと、批判した人たちがイメージしていたのは、行動理論に該当するコンピテンシー系のリーダーシップです。でもそこには、誤解があると思っています。

3. 状況適合理論の登場後

状況適合理論の登場は、理論展開の可能性や実用的可能性により、学者だけではなく会社組織や人材教育など実務の世界にも、大きなインパクト、刺激を与えました。大きく2つのポイントがあります。

a. 状況を細分化したリーダーシップ研究
状況に対する細分化した研究です。さまざま状況の中で有効なリーダーシップ理論が分化的に派生していくことになります。表1で状況適合理論のあとにテーマ別理論としたものが、この流れの中にあります。さまざまな状況を前提に置き、それぞれにおいて有効なリーダーシップを取り上げた物やテーマを絞って論じたものなどが該当し、現在も、このテーマ別のリーダーシップ理論が継続的に登場しています。

さまざまな理論や概念が登場する背景には、実際のビジネス局面での活用が中心的な理由となっています。現在のようにビジネス環境が刻々と変化する中で、リーダーが遭遇する状況も刻々と変わって行きます。その変化に対応できるリーダーシップのあり方が背景になっていると言えます。

b. 特性理論への回帰、見直し
リーダーシップ理論の発展段階の中で、特性理論の存在が軽視された時期があります。しかし、行動理論、状況適合理論、そして個々の細分化された状況やテーマ別理論の中で、特性理論的なリーダーシップの考えが再評価されてきています。

行動理論は、極端な言い方をすると行動のテクニックです。しかし、行動自体はそのベースになる特性資質から大きな影響を受けることも事実です。テクニックとして取るべき行動は定まっても、個人の特性がそのアクセルにもブレーキにもなることも否定できません。状況が行動を決めるとしても、極めてタフな状況や環境下であるほど、個人の特性による行動の違いがでることも自明の理です。

状況適合理論の中にあって、行動に注目するだけでなく、等しく特性に注目することもリーダーシップの研究においては重要視されるようになっています。過度に傾斜したり、曖昧な精神論でないかぎり、リーダーの特性を否定して考える必要は何もありません。

4. 開発を阻む根強い決めつけ、誤解

実際に会社組織におけるリーダーシップ、リーダーシップ開発の現状はどうかと、いろいろな会社でお話を聞くと、ものすごく前進的な会社組織もあれば、旧態然とした会社組織まで多種多様です。ただし、いずれの会社組織においても、リーダーシップに対する重要性や課題認識は共通して高い水準にあります。

前進的な会社組織は別にして、多くの会社組織では、未だに多いおかしな決めつけや誤解によるリーダーシップ開発の阻害要因が見られます。一番多いのが、どの役職階層の社員にも、同じリーダーシップ行動を要求すること。「社長を見習え」的な育成です。もうひとつが、「リーダー(候補)人材が、そもそもいない」です。他にもいろいろあるでしょうが、この2つがボトルネックです。

どちらにも共通しますが、安定成長時代のリーダーシップと変化とスピードの時代のリーダーシップとは違います。個々のリーダーが取り組むべき環境や状況、そして仕事のゴールは異なります。リーダー人材がいないと言うのも、固定化されたリーダー像、過去のリーダー像で考えてしまっている可能性が高いと言えます。

いま求められるリーダーシップ、リーダー像を考えなおすと、こうした決めつけや誤解は雲散霧消します。個別の状況ごとに、柔軟に、最適なリーダーシップを描きそれを発揮できるようにしなければ、リーダーシップ開発は進みません。

5. まとめ

リーダーシップ理論の変遷からもわかるように、これがすべてと言うリーダーシップの形はありません。いずれの理論も弱点や不足する部分もありますが、いずれも正しいものです。

特に最近のようにビジネス環境が変化するなかにあっては、会社組織、そしてビジネスパーソンは、さまざな理論を参考に、自社や自身の置かれた状況に応じて求められるリーダーシップを明らかにして、開発(育成)や配置、選択すべき行動を選択することが大切です。

組織としてのゴール実現のために、リーダーは従来にも増して、自ら選択や判断を考えなければならない時代になっています。現在は、周囲や上司のやり方と同じことを繰り返しても、同じような成功につながる保証のない時代になっています。

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