動機付け理論 二要因説と達成動機

前回の動機づけ理論の欲求説に続き、ハーズバーグの二要因説マクレランドの達成動機について説明します。ユニークな発想、視点の二要因説、そしてコンピテンシーにつながる達成動機と意義のある2つの考え方です。

記事内インデックス
ハーズバーグの二要因説
マクレランドの達成動機
各理論の構造的共通点と違い

 

ハーズバーグの二要因説

アメリカの心理学者ハーズバーグ(Herzberg.F.)が提唱した仕事における満足と不満足を引き起こす要因に関する理論です。

人が仕事に満足感を感じる要因と不満足を感じる要因は、全くの別物であるとする考え方で、苦痛を避けようとする欲求と、心理的に成長しようとする欲求の2つがあるという考え方です。ハーズバーグは、前者を衛生要因、後者を動機づけ要因としています。

衛生要因
充足されなければ不満足度を増すが、充足されても不満足感が減少するだけで、満足度を高めはしない要因のこと。限りのない欲求。
賃金、労働条件、経営方針、人間関係などが該当する。

動機付け要因
充足されなくても不満足感が増加するわけではないが、充足されると満足度が高まる要因のこと。
達成、承認、仕事自体、責任、昇進、成長などが該当する。

言い換えると、不満を引き起こす要因と満足を引き起こす要因とは別なものという考え方です。

ハーズバーグの考え方は、その後のジョブデザインアプローチや処遇制度設計アプローチに大きな影響を与えています。

マクレランドの達成動機

達成動機説は、米国の心理学者マクレランド(McClleland, D.C.)が発表したもので、人間の行動を引き起こす動機や欲求として、親和、権力、達成の3つがあるという考え方です。

これらの3つの動機は、どの人間にも存在しているが、この中の一つが個人の経験などから特に顕著に表れ、それが人それぞれの行動上の特徴となっているという訳です。

マクレランドの各動機は以下のような内容です。

親和動機
他者と友好的で親密な関係を築き、それを維持していきたいという欲求。
権力(パワー)動機
他者に強く影響力を与え、自分の意図する方向へ動かしたいという欲求。
達成動機
自発的により高い目標にチャレンジし、より上手く効率的に、より高い業績を上げたいという欲求。

これらの親和動機、権力動機、達成動機をまとめて三大動機と呼ばれることもあります。

当初、マクレランドはこの3つの動機を提唱しましたが、その後、もう一つの動機、回避動機を追加しています。

回避動機
失敗や困難な状況や危険を回避したいという欲求。

マクレランドと言えば、コンピテンシー(高業績者に共通する行動特性)の方で名前を記憶している方の方が多いかもしれませんが、コンピテンシーもこの動機の研究が下敷きにあってこそ成立する考え方です。

コンピテンシーが、どの動機に基づき行動化されてくるのか、その関係が見えるとコンピテンシー開発、行動変革は進めやすくなります。残念ながら、マクレランドの晩年とコンピテンシーの開花時期はタイムラグがあり、このあたりの明解な関係性は著作などでは明解に語られることなく、後継の学者やコンサルタントによりやや混沌とした状態になってしまったように感じてます。

各理論の構造的共通点と違い

これまで動機付け理論の5つの欲求説を見てきました。マレーの欲求リストを出発点とした後継理論、影響を受けた理論とも言えるので、多くの共通点が垣間見えます。

各理論で示された欲求、動機の構造を一覧化すると以下のようになります。理論によって階層化されていないものもありますので、マズローの階層欲求をもとに各理論の要素を当てはめています。理論の解釈ならびに図示を目的に弊社で作成したので、大まかな対応関係、構造関係程度にお考え下さい。

理論ごとにフォーカスしている場所や視点の違いがありますが、構造的には非常に似通っていることがわかります。


動機付け理論における欲求説は、個人の動機づけとしてではなく集団的な動機付けといわれることがあります。個々人ごとに異なる状況や特性などにより、動機付け要因は変化します。このため、欲求説から状況的な問題や個人へのフォーカスを考慮する必要などから、過程説へと研究は展開することになります。欲求説が類似点が多かったのに対し、過程説では状況変数の導入により、さまざまなアプローチ、展開がなされることになります。

ハーズバーグの二要因説、マクレランドの達成動機を説明し、これまで触れた5つの欲求説の構造的な共通点を見てきました。次回から、過程説の理論と考え方を取り上げていきます。

 

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