動機付け理論 マズローとアルダーファの階層説

マレーの欲求リスト以降、動機付けの要因を突き詰める欲求説(内容説)の立場から、著名な理論や考えが色々と登場します。現在も動機付けについて調べると真っ先に目にする機会の多い理論ばかりです。俯瞰的にこうした理論を眺め理解することで、共通性や特徴を把握でき、実際のビジネスシーンでの活用も進みます。


代表的な欲求説の理論、マズローとアルダーファの考えを簡単に紹介します。

記事内インデックス
マズローの欲求階層説
アルダーファのERGモデル

マズローの欲求階層説

アメリカの心理学者マズロー(Maslow,A.H)が1943年に発表した理論で、人間を動機づける欲求(要因)は、5段の階層構造で示され、下位階層の欲求が満たされて、初めてその上の階層の欲求が満たされるという考え方です。

階層の欲求が累積的な構造となっているという主張は批判も多く、マズロー自身も後年、必ずしも累積的である必要もなく、非累積的なケースの存在も認めています。非累積的とは、下位階層の欲求が満たされずとも上位階層の欲求が満たされることもあるという意味です。

マズローの欲求階層は、下位階層から順に以下の通りです。

生理的欲求
人の生命を維持するための根源的な欲求です。呼吸、飲食、性、睡眠などが、この階層に該当します。
安全欲求
衣や住に関わる安全性や安定性を求める欲求です。身体的な安全、身分や地位の安定、危険の回避、保護、不安・混乱回避などが、この階層に該当します。
社会的欲求(帰属欲求)
自分以外の人や組織とのつながりを求める欲求です。組織や集団への帰属、孤独の回避、参加、友人関係などが、この階層に該当します。
自尊欲求(承認欲求)
自分に対する評価、硝酸、認知を求める欲求で、自分自身の
評価と他社からの評価によるものがあります。自分が他よりも優れていたい、熟練、能力への自信、評判、地位、優越などが、この階層に該当します。
自己実現欲求
自分自身の成長を求める欲求で、満たされることでさらに高次の成長を求めていきます。成長のための行動自体が目的であるため、絶え間なく自分を動機づけることになります。

図1:マズロー 階層欲求説

また、マズローはこの5段階の欲求からもたらされる動機を大きく2つで整理しています。すなわち「欠乏動機足りないと不満足が生じる):生理的、安全、社会的、自尊欲求にもとづくもの」と「成長動機成長することそれ自体が目的):自己実現欲求にもとづくもの」です。

欠乏動機は、それ自体の欠乏を満たすことにより動機付けられますが、それが満たされるとそれ以上の行動を起こすことにはつながりません。満たされると満足し関心が薄れてしまいます。この欠乏動機は、欲求を満たす対象が自分以外の物や人であることから、環境依存型と言うことができます。

一方、欲求が満たされるほどより高次の関心や欲求を引き起こすのが成長動機です。当初の階層の最上位は自己実現欲求ですが、後年、マズローがさらにその上の自己超越欲求を追加しています。自己実現にとどまらない人間の可能性を示唆したものかもしれません。成長動機は、自分以外の問題ではなく、あくまで自分の内面が対象となるため、その意味において自律型と言うことができます。

マズローの考えの基本には、「すべての人には、成長を続けたいという生来の欲求があり、自分の能力を最大限に発揮したいという欲求をもっている」があり、成長動機につながる自己実現欲求が一番高次におかれ、人間的なものとされています。マクレガーのY理論に近いこの人間重視の考え方は(時期的にはマズローの方が先でマクレガーのXY理論は、マズローの欲求階層説に基づく)、のちの経営管理の考え方に強く影響を与え現在に至っています。


アルダーファのERGモデル

アメリカの心理学者アルダーファ(Alderfer. C)は、マズローの欲求階層モデルを修正発展させ、1972年にERGモデルを提示しました。

まず、マズローの5段階の階層を3つの階層に集約します。下位階層から順に以下の内容です。

E (existence) 生存欲求
物質的・生理的に、人間として存在し続けたいという欲求。
マズローの生理的欲求、安全欲求におおむね対応します。
R (relatedness) 関係欲求
他者との関係を良好に保ちたいという欲求。
マズローの社会的欲求、尊厳欲求におおむね対応します。
G (growth) 成長欲求
人間に本来備わっている成長を続けたいという欲求。
マズローの自己実現欲求におおむね対応します。

次に階層間の累積性を見直し、可逆性を支持しました。基本的には下位の欲求から上位の欲求を累積的に満たそうと人は行動しますが、たとえ欲求が満たされなくても上位の欲求が出現することを指摘します。さらに、上位の欲求が満たされないと下位の欲求に意識が向い、それを満たそうと行動するという可逆性を指摘します。

図2:アルダーファ ERGモデル

階層構造は、マズローよりもシンプルになっていますが、累積性の柔軟化、状況による変化などを組み込んだ考え方で少し複雑になっています。しかしながら、可逆的な事実を踏まえた理論対応で、現実の説明力は高まった考え方です。

 

欲求説に基づく代表的な動機付け理論、欲求階層説とERGモデルをご紹介しました。次回は、同じく欲求説に分類されるハーズバーグの二要因説とマクレランドの達成動機をご紹介し、これまでの欲求説の関係性を整理して見たいと思います。

 

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