柴犬は噛む、咬む犬種なのか?

ネットで柴犬のことを検索していると、「柴犬の噛み(咬み)癖がひどくて手に負えず、挙句の果てに飼育放棄」みたいな残念で悲しい記事を目にすることがあります。本当に柴犬は噛む(咬む)犬種なんでしょうか?そうとは私には思えないのですが、世間的な認識として、そうしたイメージがあるのであれば、それは払拭したいところです。

1.「噛む」と「咬む」の違い
2. わが家の鼓太郎の場合
3. わが家の小夏の場合
4. 日本犬のDNA
5. 末永く楽しく暮らそう

 

1.「噛む」と「咬む」の違い

何気なく使っている「かむ」と言う言葉ですが、漢字表記では二種類あります。「噛む」「咬む」です。「噛む」は歯を合せる動作のことで、「咬む」は相手を傷つけ攻撃することを意味します。

「噛む」は、甘噛みとか、何か要求するときの噛む動作で使います。あまり強い力で噛むことはありません。歯が当たるので、痛いには違いありませんが、こちらが怪我するようなことはありません。子犬同士がじゃれて噛み合っているのもこれですし、母犬が子犬に対してしつけている時も基本はこの噛むです。攻撃というよりも犬のコミュニケーションスタイルと理解した方が良いかもしれません。

一方、「咬む」は、かなりの力で遠慮なく歯を立ててきます。柴犬クラスの体格で本気噛みをされると、流血は当たり前で、場合によってはかなりの怪我になってしまいます。咬傷という言葉があるように、傷を負わせるほどの類が「咬む」です。これは意識が完全に攻撃モードになっているときです。

とは言え、「噛む」と「咬む」の境目は微妙なので興奮してくると、噛むから咬むにエスカレートする事は十分にあります。

2. わが家の鼓太郎の場合

わが家の鼓太郎は、シニアになってからの印象がブログ上では強いようで、何かいつも寝てばっかりで、優しそうな穏やかな顔に見えるらしく、とても咬むような犬には見えなかったかもしれません。

しかし、若犬時代までは、超問題犬。攻撃的に咬む犬でした。

2003年頃 鼓太郎3才 筋肉質で一番力の強かった頃。神経質でした・・・。猟犬のような風貌です。

思えば初めてペットショップで会った日も、遠慮なしに終始、人の手をカプカプと齧ってきました。まだ生後二か月足らずで顎の力も強くなく、小さな乳歯だったので、痛いとは思わなかったのですが、ちょっと遠慮のない齧り方でやたら口を出すのが気にはなってました。

しかし当時、柴犬はおろか子犬と接する機会もなかったので、こういうものかと勝手に思い、さらに店員さんが「乳歯が生え変わるまでの半年間位は歯が痒くて、子犬はどうしても甘噛みが多いんですよ」という説明に簡単に納得していました。でも、他に会った子犬たちは、鼓太郎みたいにしつこく齧るようなことはありませんでした。それが少し懸念でした。

そして懸念は不安になり悩みへと・・・。それでも乳歯から永久歯に生え変わるまでの辛抱と、家に迎え入れて、躾に取り組んでみました。が、難しい。私の手に限らず、家具など齧りまくっています。齧り棒などを与えてごまかしましたが、それでも家中を齧りまくる・・・。破壊行動と齧りは、この時期は同じものです。

そうこうして居る内に乳歯の生え変わりは終了。齧り癖は収まらず。躾も上手くいかず。この頃は、こちらも腕力で抑え込むようになってましたが、鼓太郎は逆にそれに反発し攻撃的になっていました。体もが大きくなり力も強くなり、なによりも永久歯が大きくて、ちょっと怖くなってきた・・・。

それでも、平常時はだいぶコントロールが効く程度の躾は入りました。ただ、そこで違う問題が。鼓太郎は一種のパニック症候群で、怖いもの(雷、病院、耳掃除などなど)に遭遇すると初めブルブル震えていて、そしてパニックへ。パニックに陥るとコントロールは効かず。落ち着かせようとさせると、口で反撃します。こうなると咬みます。思いっきり。

咬まれると流血。比較的皮膚の皮が厚いのか、私は流血の機会が家内より少なかったのですが、咬まれたところは、青黒くなって(青タン状態)、しびれた様な痛みが長く続きます。骨をも砕くという感じです。この頃は、家には防護手袋(厚手の皮の手袋:作業用のお店で売ってるゴツイやつ)を常備していましたが、簡単に穴だらけにされてしまい、最後は食いちぎられました。歯もさることながら、顎の力が強いので、咬み付いて振り回すような動きを取りますが、これをやられると大怪我の危険性があります。実際にそこまではやられませんでしたが、近い状況はたびたび。

3才から4才にかけてが一番狂暴な時期でした。柴犬の噛み癖に手を焼いてという人たちの気持ちは分かります。でも諦めてはお互いに不幸しか残りません。辛抱強く、原因を取り除いて付き合っていくしか道はありません。ドッグトレーナーに預けるという選択は、わが家の場合にはありませんでした。何となく、知らないところで違うワンになってしまうのは寂しいような気がしたように記憶しています。

普段はだいぶ大人しくなったのですが、スイッチが入った時が狂暴なことは変わりませんでした。スイッチの入る理由がよくわからないこともあったので、鼓太郎をよその人やよそのワンに近づけないように気を付けてました。ただ、見た目が大人し気に見えたので、いろんな人やワンが寄ってくるのには、正直閉口しました。急いで間に入るようにしていましたが、いきなり手を出す人がいるのはまいりました。怪我をさせたことはありません。

それでも4才になったころから、パニック時以外の咬み付きはほぼなくなりました。気長に付き合ってきたせいでしょうか。嫌がることをしなかったせいでしょうか。こちらが、鼓太郎の危ない兆候(目が吊り上がり、鼻に皺を寄せて、歯をむく、時々、低いうなりを伴う)を早くに見つけて回避したせいかもしれません。本質は変わってないみたいですが、表面的には少し改善していました。

この頃に小夏が登場。

小夏を迎えたときの理由の一つに、オスとメスが一緒に暮らすと乱暴なオスも少し丸くなると聞いたことがあったので、ほのかな期待もありました。

効果のほどはわかりませんが、確かに鼓太郎がパニック時以外で咬むという問題行動は小夏が来てからなくなりました。パニック時の口での攻撃は8才くらいまで続きました・・・。

3. わが家の小夏の場合

小夏を迎えた時、「鼓太郎みたいに噛み癖が強いと嫌だなぁ・・・。鼓太郎×2では手に負えないぞ」と思ってました。でも心配は杞憂でした。

初対面で家内に抱っこされた小夏は、大人しく抱かれながら、家内の手をペロペロと舐めるだけ。鼓太郎は、初めて抱かれたとき何とか逃れようとジタバタして手をガジガジ齧ってましたが、小夏は全然、齧るような素振りもみせません。

オスとメスの違いなのか、個体差なのか。

2006年頃 小夏3才 キツネみたいにスマートだった。噛み癖はなかったけど、やっぱり口は大きく噛まれたらやはり危険。

その後においても、咬むことはもとより噛み癖もほとんど見せることなく今日に至りました。突発的に驚いた時は、反射的に咬み付きはしました。夜、ベッドで一緒に寝ている時に、私が寝返りを打って誤って小夏を蹴とばしたりすると咬み付きました。でも、これは攻撃じゃなくて、むしろ防衛のために咬み付いたというべきかと理解しています。

小夏に咬まれた時は、鼓太郎とは種類の違う痛みです。比較にならないほどの軽い痛みです。顎も小さく、歯も小さいせいなのか、針でぷすっと刺されたような痛みです。

小夏は決して気が弱い(穏やか)わけじゃなくて、性格は鼓太郎よりずっと強くてわがままなのですが、咬むという問題や他の躾にも手のかからない子でした。

4. 日本犬のDNA

犬の本能として噛む・咬むという行為は、自然なものです。さらに人間と長く暮らしてきた犬族は、その過程で人が行う狩猟を手助けしてきました。この狩猟行為の伴侶として、噛む・咬むという本能は、特に日本犬については強化されてきたのではないかと思います。

特に日本犬と言いましたが、それは日本と西洋の狩猟スタイルの違いが影響しています。日本の場合は、犬自らが獲物を狩る、攻撃する狩猟です。西洋の場合は、犬が獲物を見つけ人間が狩り、そして犬が獲物を運んでくる(獲物まで案内)という型です。

あくまでも、個人的な推測ですが、日本犬は戦う必要性から咬むことが特性としてDNAの中で強化されたと思ってます。

日本犬は、祖先をたどれば柴犬に限らずすべて狩猟犬です。その体系の違いや住む場所によって狩りのターゲットは違いますが、いずれにしても狩るという攻撃本能は強く持っています。

現代では、狩猟から離れ家庭犬としての生活が長くなってきている日本犬、柴犬ですが、そうした攻撃的な血が眠っていることは、日本犬、柴犬と暮らすときに理解しておくことが大切なことかと思っています。

可愛い可愛いだけで、日本犬と暮らすと思わぬ事態に見舞われることも否定できません。

5. 末永く楽しく暮らそう

お題をはじめに戻すと、結論的に柴犬は噛む・咬む犬種かもしれません。

しかし、それはあくまでも本能的な個性であり、一緒に暮らす上で問題行動とイコールにはなりません。噛む・咬む必要性がなければ、常時、攻撃的な柴犬は稀です。信頼関係が出来上がっていれば、噛む・咬む傾向に強い個体であっても、不必要に噛む・咬むことがないのも柴犬の特徴だと思います。もちろん、例外はいます。

手に負えないなんて途方にくれたら、ちょっと自分とワンの信頼関係を考え直してみると、それからの楽しい暮らしが期待できます。噛む・咬む兆候が見られたら、辛抱強く接し、改めさせなければなりません。

個人的な感覚としては、むりやりの主従関係を押し付けようとしても上手くいかず、信頼関係を作る方が効果的だったと思っています。力づくでは、柴犬との関係はうまくできないと思っています。言う事を聞かないと思っても、暫く放置していると、逆にワンがこちらに関心を示して寄ってきます。それだけで、信頼関係はできます。あとは、スムーズに進むというのが私の少ない経験からの考えです。

追いかければ、逃げる。日本犬は、ツンデレ系が多いと思ってます。

 


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