2000年8月13日鼓太郎がやって来た 大団円

(この記事は、鼓太郎と小夏の陽だまり 2015.6.24の記事を転載リライトしたものです。)

こんにちは、鼓太郎です。いよいよ僕とおとうさん、おかあさんとの初対面です。
僕は店の奥、舞台裏にいました。薄暗い部屋に、ゲージが何段にも積まれた倉庫みたいなところです。

鼓太郎2000年8月ゲージの外に出してと猛アピール

なんで僕、店先じゃなくてこの部屋にいたんだろう。記憶が曖昧なせいもあるけど、それは今も謎。
売れ残り?それとも到着したばかり?なんか、この店に長いこといたような気がするけど勘違い?

それはさておき、僕は薄暗い中でも眠らずにゲージの中をうおさおしてました。他の子たちは、みんな寝てたけど、僕はうおさお。
そんな時、入り口から人が入って来る気配。
遊んでもらえるかと期待し、狭いゲージの中をさらに激しくうおさおしてました。

「この子なんですけどね」と店員さんが僕を指差す。

「あれあれ、ずいぶん元気だけど、小さいですね。俗に言う豆柴ですか?」。
このころ世間的に、豆柴と言う言葉が出回り始めた時期だったように思います。極小柴とか小豆柴というのは、言葉としてまだなかったはず。

「いえ、豆柴っていうわけじゃないんですけど、少し小柄ですね。でも元気な男の子ですよ」。

おとうさんとおかあさんが、僕のことを覗きこんでいる。僕もおとうさんとおかあさんをじっと見ます。あ、この人達かも、僕を迎えに来るのは。
すぐに猛アピールです。
狭いゲージの中でぴょんぴょん跳ねたり、ぐるぐる回ります。
おとうさんが、ゲージに指を突っ込んできたので、思いっきり尖った乳歯で齧った。かなり痛かったみたい・・・。

「うーん、落ち着きのない子だなぁ。すごい噛み癖だし」。
「赤ちゃんの時は、どうしても甘噛みするんですよ」と店員さんがフォロー。
「いやいや、甘噛みと言うレベルじゃなかった。大きくなって、噛み癖あると大変だよ」。

いけない、ピンチです。
作戦を変えて、ぴょんぴょん跳ねるだけにしなければ。
でも、ぴょんぴょん跳ねながらも、僕はおとうさんとおかあさんをずっと見ていた。

「それにしても元気だね」。
「どうします、明るい所で見てみますか」。
「うん、お願いします」。

やりました、とりあえずゲージからは出してもらえました。店員さんに抱えられ店先に。
その間に、おとうさんとおかあさんは、手を消毒してます。

「それじゃあ、どうぞ」と店員さん。
おかあさんが真っ先に手を出してきた。
「あったかーい、臭いけどふわふわ」。
臭いは余計だと思うけど、僕が臭いんじゃなくてお店の匂いが染みついただけです。そんなこと言うと、また噛み噛みです。
おかあさんも痛がりながら「この子、こんなに噛むの変じゃないかしら」とか言う。
しまった!またやってしまった。

「さっきの子も抱っこさせてもらえますか」。
「じゃあ、出しますね」と眠っていたもう一匹の柴犬も店の床の上に。
僕も並べて床の上に降ろされた。
嬉しくて僕は、店の床の上を爆走。
もう一匹の子は、寝ぼけてよたよたしている。よたよたしながら、ウンチもしちゃった。

ウンチはご愛敬としても、並べると僕が小柄なのがよくわかる。
マンション犬になるので、出来るだけ小柄なほうが良いと思っていたおとうさん、プラス1点したみたい。
元気なのもプラス1点。
元気だけど、一声も吠えなかったので、これもプラス1点。
でも噛むので-5点だったみたい・・・(トータルは-2点)。

「どっちが良いですか?」と商売熱心な店員さんが決めにかかる。
おかあさんは、「どっちいいの」とおとうさんの顔を覗きこむ。
おとうさんの口癖だと「どっちも」って言いそうだけど、流石に二匹は飼えないので、暫し沈思黙考してる。

重い沈黙の後、ぼそっと「こっちの子かな」って指差したのは、なんと僕でした。やりました!

店員さん、おとうさんが僕を選んだのが意外だったみたいで、「え、・・・そうですか」と間抜けな返事している。
なんだろう、やっぱり僕は売れ残りの返品予定だったのかな。
おとうさんやおかあさんを齧ったように、他に見に来た人を齧った問題犬だったのかもしれません。

それでも店員さん、流石に最後は商売人で、いろいろフォローしてくれました。
「この子は、耳ももうしっかり立っているし、尻尾もクルンと巻いてます。白足袋も履いているし、裏白もしっかりしてますよ。顔の黒いのは、大人になればきれいになるし、からだの黒い毛もきっと抜けて来ると思います。良い、柴犬ですよ」と、良いことばかり言ってくれました。

「お車ですか?それじゃあ、ブラッシングなどして準備しますけど、二時間くらい待っていただければ、一緒にお帰りできますけどどうしますか?」
おとうさん、店員さんに聞こえないように小さい声でおかあさんに「こんな臭い店に二時間もいれない」とか言ってます。
おかあさんが、「じゃあ二時間したらまたきます」と翻訳して店員さんへ伝えていた。

犬を飼ったことがないということで、やれゲージが必要、水飲み器も必要、お皿もドッグフードもと、なんかすごく沢山一緒に買わされて、支払いの時お金が足りなかったみたいです。
店の前に銀行があったのでお金を引き出そうと、残りは引き取りの時ということで、おとうさんとおかあさんはいったん店から出て行きました。

僕と店員さんは、内金が入っていたので、引き取りにやって来ないことはありえないと安心してました(笑)。

でも心配は不要でした。約束の時間よりも早く、車に乗っておとうさんとおかあさんがやってきました。
僕は、段ボールの箱(店頭に並んでるのじゃなくてお持ち帰り用)に押し込まれて、おかあさんに手渡されました。

若い店員さん(さっきまでの商売人の店員さんはおばさんだった)が僕を手渡す時に、箱の中の僕に「今日からの新しいおかあさんですよ」って言っていました。
なんか、少し嬉しかった。おかあさんも嬉しかったらしい。

ペットショップを後に、車に揺られること一時間ちょっと。
短い間でしたが、お世話になりました。
車酔いもせず、眠ることもなく僕は箱の中でじたばたしてました。
あんまり暴れるので、心配したおかあさんが度々箱のふたを開けて覗きこんできた。
そのたびに飛び出そうと僕はチャレンジするものの阻止されてた。

とかやっているうちに、車が停まり、「さあ、着いたよー」の声。
そこからマンション内を5分ほど移動して、ようやくお家に到着です。

でもなかなか箱のふたをあけてくれません。
「ゲージ組み立ててからにしようか」。
「えー、その間閉じ込めとくの可哀そうでしょう」とか聞こえる。
「じゃあ、いっか」、箱のふたが開きます。

ん、まぶしい。

箱のへりに手を掛けて二本足で立って、きょろきょろとあたりを僕はうかがっていたそうです。
可愛かったらしいですが、おとうさんもおかあさんも写真を撮るということが考えもつかず、その時の写真はありません。残念。

しばしおかあさんとリビングの上で遊びました。
おとうさんは、遊びたかったみたいですが、その間、ゲージの組み立てをやってました。男は悲しいね。

出来上がったゲージに入れられたところです。ゲージ好きじゃないんですけど。

鼓太郎2000年8月外に出たいと暴れ、疲れてお眠むモード

はぁー、ここが僕の新しいお家ですね。
もう、あっち行ったりこっち行ったりしないで、ずーっとここで一緒に暮らそう。 と、思っていたかは覚えてませんが、きっとそれに近いことを思っていたはず。

くつろいだ姿勢で、安心した顔してます。

同じゲージとはいえ、お店の倉庫のゲージの中とは全然別物です。

人と人との出会いは不思議。
でも、それ以上に人と犬との出会いは不思議。
運命の歯車が何時廻り始めるのかわからないけど、何かが引きあって出会うに違いありません。

僕とおとうさんおかあさんとの出会いは何時決まっていたんでしょう。
でも回り始めた運命はもう変えられない。
今日まで、変わっていないと思います。

何故って、今も僕はこのお家でおとうさんとおかあさんと一緒に暮らしているんだから。

(でも、4年後に参加してくる小夏は、この時の運命のシナリオには含まれていなかったと思う・・・)。

 

ああ疲れた、と大団円を書き終えたおとうさん。
そうだね、文字の量は何時ものブログ記事の3倍くらいあるもんね。

でも、ありがとうです。
僕のお願いした「お家記念日の顛末」をブログに書いてくれて。
さんきゅ。


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